米USTR、2023年の模造品・海賊版に関わる悪質市場の調査結果を発表

(米国、中国)

ニューヨーク発

2024年01月31日

米国通商代表部(USTR)は1月30日、2023年の模造品・海賊版に関する悪質市場の調査結果を公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。今回は39のオンライン市場と18カ国33の物理的な市場を列挙した。

今回列挙した悪質市場の数は、前回2022年版(2023年2月1日記事参照)と同数だった。ただし、前回に引き続いて掲載対象になった市場もあれば、市場の閉鎖、人気や重要性の低下、取り締まりや自主的な措置による知的財産権を侵す商品やサービスの著しい減少などの理由で、掲載されなかった市場もある。

国別で最も多かったのは、前回同様、中国に関連する市場だった。中国に関係するオンライン市場では、電子商取引(EC)市場の淘宝(タオバオ)や微信(WeChat)、DHゲート(DHGate)、拼多多(ピンドゥオドゥオ)、クラウドサービスの百度ワンパン(Baidu Wangpan)が前回に続いて掲載された。物理的市場では、模造品の製造や流通、販売をしているとされる北京市や広東省深セン市など7つの中国の市場が掲載された。

例年、特定のテーマに焦点を当てるセクションでは、「模造品がもたらす健康と安全の潜在的リスク」を取り上げ、模造品がいかに低品質の材料で作られ、規制や安全管理がされておらず、危険な製品につながっているかを説明した。また、模造品の製造や輸入、輸出、流通に対して、より効果的な刑事上の取り締まりや国境措置が必要だとも指摘している。

USTRのキャサリン・タイ代表は今回の報告書発表に際して、模造品などに対する取り締まり強化が「ミドルアウト(中産階級支援による購買活性化)とボトムアップ(貧困層支援による下支え)による経済成長に重要だ」として、悪質市場を特定することの成果を強調した。

USTRはこの調査について、2006年から知的財産に関するスペシャル301条報告書(注)に含めるかたちで結果を公表していたが、2011年以降は同報告書と切り離して調査結果を公表している。同調査は、パブリックコメントや米国の在外公館から寄せられた情報に基づいて、模造品や海賊版商品・サービスの販売に関わっている主要なオンラインや物理的な市場を列挙している。ただし、USTRは調査結果について、網羅的なものではなく、法律違反の認定や米国政府による当該国の知財の保護・執行状況の分析を反映したものでもないとしている。

(注)スペシャル301条報告書は、1974年通商法182条に基づき、知財の保護や執行が不十分な国を特定し、懸念が大きい順に「優先国」「優先監視国」「監視国」に指定している。優先国には、米国製品に特に深刻な悪影響を与える政策や慣行を取っている国を指定し、1974年通商法301条に基づく調査の対象となる(2023年4月17日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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