カナダの第3四半期GDP成長率、前期比年率マイナス1.1%、輸出減など受け

(カナダ)

トロント発

2023年12月01日

カナダ統計局が11月30日に発表した2023年第3四半期(7~9月)の実質GDP成長率は前期比年率マイナス1.1%外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとなり、中央銀行の10月時点の成長率予測0.8%増を大幅に下回った。第2四半期(4~6月)の成長率は、9月発表のマイナス0.2%(2023年9月4日記事参照)からプラス1.4%に改定されたため、「テクニカルリセッション」と呼ばれる2四半期連続マイナス成長は回避した。

統計局は、輸出の減少や在庫投資の縮小が政府支出や住宅投資の増加によって一部相殺されたと説明した。

財・サービスの輸出は、石油精製品の減少により、第2四半期の5.1%増から第3四半期には5.1%減に転じた。輸入は、衣類や履物、繊維製品などが減少し、第2四半期の4.4%増から第3四半期は0.6%減となった。

在庫投資は2021年第3四半期以来最小となった。このうち、自動車の在庫増加で小売り在庫は増加したが、製造業、卸売り在庫はともに減少し、成長の重しとなった。

非住宅用構造物・機械・設備投資は、カナダ西部のキティマットの液化天然ガス(LNG)プロジェクトが完成間近なことなどが減少に寄与し(2018年10月9日記事参照)、第2四半期の13.9%増から第3四半期は10.1%減に転じた。

個人消費支出は、第2四半期の0.1%減から、第3四半期は0.1%増に転じたものの、おおむね横ばいだった。

一方、政府支出は、第2四半期の1.4%増から第3四半期は7.3%増となった。住宅投資も、5四半期連続の減少を経て、第3四半期は2.0%増に転じた。

統計局の発表を受け、カナダ銀行大手トロント・ドミニオン(TD)銀行のディレクター兼シニアエコノミストのジェームス・オーランド氏は「中銀が再び利上げに踏み切る理由はない。中銀が6月と7月に利上げを決定したのは、住宅需要の反動とともに、2023年第1四半期(1~3月)の成長率が急上昇したためだった。しかし、それもつかの間のことで、それ以来、消費、雇用増加、全体的なインフレは緩和している。トレンドを下回る経済成長は今後数カ月続くと予想され、インフレ率は徐々に目標の2%に近づくだろう。よって、中銀が利下げに向けた準備を始めるには数カ月かかると思われ、当行では2024年4月になると予測する」とコメントした(TDエコノミクス11月30日)。

次回の中銀の政策金利発表は12月6日に予定されている。

(飯田洋子)

(カナダ)

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