英政府、バッテリー戦略発表、日産はギガファクトリー増設へ
(英国、日本)
ロンドン発
2023年12月08日
英国政府は11月26日、英国初となる「英国バッテリー戦略」を発表した。2030年までに世界的に競争力のあるバッテリーサプライチェーンを実現し、経済成長とネットゼロへの移行を支援するための政府活動をまとめている。
同戦略は「設計(Design)」「構築(Build)」「持続(Sustain)」の3つの柱から成る。
「設計」では、小型・軽量かつ大容量で高価値のバッテリー製造を支援すべく、イノベーションの促進、革新的な融資メカニズムの検討、消費者や労働者の保護を目的としたバッテリーの製品安全基準の維持に取り組む。政府が支援する融資オプションは、英国ビジネス銀行(BBB)、英国インフラ投資銀行(UKIB)、英国輸出信用保証局(UKEF)によって提供され、英国企業の事業展開を支援する。
「構築」では、国内産業や国際的なパートナーと緊密に協力し、国内の力強い成長と輸出市場の成長を支える強靭(きょうじん)な英国の電池製造サプライチェーンを確保する。自動車変革基金(ATF)により電気自動車(EV)サプライチェーンを支援する。国際パートナーとの協力については、日本を含める7カ国と重要鉱物に関する協定を既に締結し、重要鉱物サプライチェーンの強靭性強化に取り組む(2023年9月7日記事参照)。
「持続」では、バッテリー産業に必要なスキルを特定し、育成するとともに、グリーンな貿易に向けて障壁撤廃に関して国際パートナーと協力する。
なお、バッテリー製造に必要な重要鉱物に関する戦略は2022年7月に発表されており(2022年8月3日記事参照)、2023年3月に改定もされている。このほか、重要セクターのサプライチェーン強靭性向上への戦略も近く発表される予定。
日産、英国でのEV生産に追加投資
英国内のバッテリー産業の動向では、日産自動車が11月24日、イングランド北部サンダーランドの同社EV生産ハブへの大規模投資を発表。同工場でのEV新型車種の生産とバッテリーのギガファクトリー増設に約20億ポンド(約3,680億円、1ポンド=約184円)を追加投資する。日産は2021年7月、中国の再生可能エネルギー開発大手傘下のバッテリー企業AESCグループと、10億ポンドの投資によるギガファクトリー建設計画を発表しており(2021年7月2日記事参照)、今回の発表はそれに続くものとなる。英国政府によると、日産による英国への投資は今回の発表で総額60億ポンドを超える。日産は、欧州で今後投入する新型車は全てEVとするほか、欧州での乗用車販売に関しても、2030年までに全てEVとする方針を掲げている。
(チャウジュリー・クリシュナ、菅野真)
(英国、日本)
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