ドイツ商工会、EU域外の専門人材受け入れ拡充に語学能力向上施策を求める
(ドイツ)
調査部欧州課
2023年12月13日
ドイツ商工会議所連合会(DIHK)は11月29日、熟練・専門労働者に関する年次調査報告書を発表した(プレスリリース
)。DIHKは10月に秋季景況感アンケート調査結果を発表したが(2023年11月1日記事参照)、同調査では熟練・専門労働者の採用状況に関しても質問しており、2万2,000社近くが回答。今回の報告書ではその際の回答を分析した。
報告書では、労働者を職業訓練・資格の水準別に、(1)職業訓練未修了者、(2)デュアルシステム(注1)による初期職業訓練修了者、(3)マイスターなど上級職業訓練修了者、(4)大学卒業以上にカテゴリーを分け、また(2)~(4)に該当する者を熟練・専門労働者とした。
回答した2万2,000社近くのうち、募集しても採用できず2カ月を超えて空席のポストがあると回答したのは50%だった。採用できない労働者のカテゴリーは、(1)が35%、(2)が55%、(3)が40%、(4)が34%だった(複数回答可能、添付資料図1参照)。産業別にみても、鉱工業、建設、商業、サービスのいずれの部門でも(2)のカテゴリーの労働者を採用できていないと回答した企業の割合が最も高かった。企業規模別にみると、従業員1~999人の企業では(2)のカテゴリーの労働者を最も採用できていなかったが、従業員1,000人以上の企業では(4)のカテゴリーの労働者を採用できていないと回答した割合が最も高かった(複数回答可能、添付資料図2参照)。
労働力不足の解消を目指し、ドイツではEU域外から熟練・専門人材受け入れ拡充のための法改正が行われ(注2)、企業は今後、積極的にEU域外人材を採用すると予想される。今回の報告書では、EU域外からの熟練・専門人材の採用を進めるために必要な施策についての回答も分析。「国内外での語学講座開設による語学力(ドイツ語)向上」と回答した企業の割合が62%、「ビザや就労許可関連の行政手続きの簡易迅速化」が54%、「職場近くでの十分な住居確保」が38%だった(複数回答可能、添付資料図3参照)。
DIHKは、EU域外からの熟練・専門人材による職場でのスムーズな職務遂行や顧客と発注者とのコミュニケーションのためにはドイツ語能力が重要だと指摘。EU域外人材の就労に関連する行政機関のデジタル化や効率化も求めた。
なお、今回の報告書では、大学卒業以上の熟練・専門労働者のうち最も不足しているのは、ITやエンジニアなどの理系分野の労働者だとした。ケルン経済研究所(IWケルン)の11月発表の調査によると、2023年第1四半期(1~3月)にドイツ国内企業で雇用されていた外国籍で大学卒業以上の理系分野の労働者は、インド出身者が2万8,918人で最多だった(添付資料図4参照)。
(注1)義務教育終了後、専門・職業学校などでの座学と企業での実習を並行して進めるドイツの伝統的な職業訓練システム。
(注2)専門人材移民法の改正法が2023年8月18日に公布、大半の条項が11月18日から段階的に施行。
(二片すず)
(ドイツ)
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