2024年米大統領選の共和党第4回討論会、各候補が対中強硬姿勢アピール

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月11日

2024年米国大統領選挙に立候補を表明している共和党候補者による4回目の討論会が12月6日、アラバマ州タスカルーサで開催された。共和党全国委員会(RNC)の基準を満たしたロン・デサンティス・フロリダ州知事、ニッキー・ヘイリー元国連大使(トランプ政権時)、実業家のビベク・ラマスワミ氏、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事の4人が登壇した。登壇者は第1回討論会の8人から半分に絞られた(2023年8月25日記事参照、注1)。共和党候補の世論調査で圧倒的な優位を保つドナルド・トランプ前大統領はこれまでと同様に参加せず、フロリダ州で私的な選挙資金調達イベントに出席した。

討論のテーマは、イスラエル情勢や対中政策などの外交課題から、南部国境や経済対策、司法・選挙制度、医療保険制度などの国内課題まで及んだ。イスラエル情勢を巡って、デサンティス氏は自身の従軍経験に言及し、イランにもっと強い姿勢で臨む必要があると強調した。クリスティ氏は、米国人を救出できる作戦があるならば、米国軍を現地に送り込むことをいとわない意向を示した一方、ラマスワミ氏は、米国はイスラエルの決断に関与すべきではないと主張した。ヘイリー氏は中東やウクライナ情勢と台湾情勢はつながっているとして、これらの地域で勝利を収めるには「強い米国」が必要だと唱えた。

対中関係では、各候補が強硬姿勢を貫いた。ヘイリー氏は、南部国境から密輸されるフェンタニル(注2)問題の核心は中国にあるとして、同国が対策を講じるまで恒久的正常貿易関係(PNTR)を停止すべきと訴えた。同氏やラマスワミ氏は、医薬品などの重要製品の対中依存をなくす必要性を提起した。中国の台湾侵攻の可能性について、デサンティス氏は抑止戦略が重要だと指摘し、「中国の野望を阻止することは、私が大統領として行う国家安全保障上の第1の課題だ」と説いた。ヘイリー氏は同盟国とのパートナーシップを重視する姿勢を打ち出し、クリスティ氏は中国との経済関係を理由に台湾防衛をためらうことはしないと言明した。

「ワシントン・ポスト」紙などが討論会後(12月6~7日)に行った世論調査で、どの候補が最高のパフォーマンスを発揮したか尋ねたところ、共和党予備選・党員集会の投票予定者でデサンティス氏と回答した割合が30%と最も高く、ヘイリー氏が23%で続いた。第3回討論会後の調査と順位が逆転した(2023年11月10日記事参照)。

今回の討論会は、年内に行われる最後の討論会となった。共和党は年明け早々に大統領候補者選びを本格的に開始する。2024年1月15日にアイオワ州の党員集会、1月23日にはニューハンプシャー州の予備選が行われる。これらの党員集会・予備選に先立ち、CNNは1月10日にアイオワ州デモインで、1月21日にニューハンプシャー州ゴフスタウンで候補者討論会を主催すると発表している。また、ABCニュースも1月18日にニューハンプシャー州マンチェスターで同様に候補者討論会を開催予定だ(注3)。

(注1)共和党の主要候補では、マイク・ペンス前副大統領が10月28日に、ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)が11月12日に、ダグ・バーガム・ノースダコタ州知事が12月4日に、それぞれ選挙戦からの撤退を表明している。

(注2)合成オピオイドの一種で、鎮痛剤として使用されるが、米国では過剰摂取による死者が増えており、社会問題になっている。中国がメキシコから米国に密輸されるオピオイドの原料となる化学物質の供給源になっているとされる。

(注3)これまで行われた討論会はRNC公認だったのに対し、CNNとABCニュースが1月に開催する討論会は、RNC公認とはならない見通し。

(甲斐野裕之)

(米国)

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