2024年米大統領選の共和党候補者討論会、歳出削減で一致もウクライナ支援巡り対立

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月25日

2024年の米国大統領選挙に立候補を表明している共和党候補者による初めての討論会が8月23日、ウィスコンシン州ミルウォーキーで開催された。共和党全国委員会(RNC)が設定した世論調査の支持率などの基準を満たした8人が登壇した(注1)。世論調査で首位に立つドナルド・トランプ前大統領は討論会には参加せず、事前に収録したインタビュー動画を討論会に合わせて公開し、独自に主張を展開した。

討論会では、経済政策から人工妊娠中絶や犯罪対策などの国内問題、外交や移民対策まで幅広いテーマを巡って議論が交わされた。バイデン政権の経済政策「バイデノミクス」に関し、各候補はインフレや連邦債務の増加を招いていると非難し、歳出削減の必要性を説いた。ニッキー・ヘイリー元国連大使はトランプ前政権にも批判の矛先を向け、前政権下で成立した新型コロナウイルス対策法による支出も問題視した。人工妊娠中絶の問題では、マイク・ペンス前副大統領やティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)が一定の条件で連邦レベルでの禁止を主張したのに対し、ダグ・バーガム・ノースダコタ州知事は州の判断に委ねるべきとの考えを示した。

外交政策では、ロシアの侵略を受けるウクライナへの支援の是非を巡って意見が対立した。クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事やペンス氏、ヘイリー氏は支援の継続を支持した一方、実業家のビベク・ラマスワミ氏はウクライナ支援に充てる資金を南部国境の警備に使うべきだと主張した。ロン・デサンティス・フロリダ州知事は支援を否定しなかったものの、欧州諸国がより一層支援を行うことが条件だと語った。中国は、ロシアとの関係やフェンタニル問題(注2)など複数のトピックで各候補から非難の対象となったが、対中政策全般に関する深い議論には至らなかった。

また、各候補は、これまで4回起訴されたトランプ氏に対する立場も明らかにするよう迫られた。トランプ氏が有罪判決を受けながら共和党候補に指名された場合、同氏を支持するか問われた際、クリスティ氏とエイサ・ハッチンソン前アーカンソー州知事を除く6人が支持する意向を示した。

討論会後の主要メディアの反応をみると、公職経験のないラマスワミ氏が政治経験のあるほかの候補に勝って議論の中心にいたとの評価が目立つ。一方、選挙戦でトランプ氏がリードする状況は今後も変わらないとの見方は多い。トランプ氏はX(旧ツイッター)で公開したインタビューの中で、世論調査での自身の大幅なリードに触れ、討論会に出席しなかったことを正当化している(CBSニュース8月23日)。「ワシントン・ポスト」紙などが討論会後(8月23~24日)に行った世論調査で、どの候補が最高のパフォーマンスを発揮したか尋ねたところ、共和党予備選・党員集会の投票予定者の29%がデサンティス氏と答え、ラマスワミ氏(26%)がこれに続いた。

第2回の討論会は9月27日にカリフォルニア州シミバレーにあるロナルド・レーガン大統領図書館で開催される予定となっている。

(注1)ダグ・バーガム氏(2023年6月13日記事参照)、クリス・クリスティ氏(2023年6月8日記事参照)、ロン・デサンティス氏(2023年5月26日記事参照)、ニッキー・ヘイリー氏(2023年2月15日記事参照)、エイサ・ハッチンソン氏(2023年4月3日記事参照)、マイク・ペンス氏、ビベク・ラマスワミ氏、ティム・スコット氏(2023年5月23日記事参照)の8人。そのほか、保守系トークラジオ番組ホストのラリー・エルダー氏らも共和党から立候補を表明しているが、RNCの基準を満たさず討論会には不参加だった。

(注2)合成オピオイドの一種で、鎮痛剤として使用されるが、米国では過剰摂取による死者が増えており、社会問題になっている。中国がメキシコから米国に密輸されるオピオイドの原料となる化学物質の供給源になっているとされる。

(甲斐野裕之)

(米国)

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