米大統領選共和党候補者が3回目の討論会、ヘイリー氏に高評価

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月10日

2024年米国大統領選挙に立候補を表明している、共和党候補者による3回目の討論会が11月8日、フロリダ州マイアミで開催された。

今回は共和党全国委員会(RNC)が設定した基準を満たした5人が登壇した(注1)。なお、共和党支持者間で引き続き5割以上の支持率を維持しているドナルド・トランプ前大統領は前2回と同様に登壇を見送り、マイアミ近郊のハイアリアで支持者集会を開催した。

2時間に及んだ討論会では、冒頭で司会者からの、なぜトランプ氏ではなく自身が大統領になるべきか、との問いから始まり、登壇しなかったトランプ氏の存在感が際立つかたちで幕を開けた。また、ここ最近支持率が上昇しており、2024年1月から各州で順次行われる共和党の予備選挙・党員集会の最初の州であるアイオワ州でトランプ氏に次いで2番手の支持率に付けているニッキー・ヘイリー元国連大使に、他の候補者が挑む構図となった。

討論の議題はイスラエルとハマスの衝突、ウクライナ支援、中国との関係など、半分以上の時間が外交問題に割かれた。候補者らはハマスを糾弾しイスラエルに支援を示す点ではおおむね一致していたが、ウクライナ支援については大きく意見が分かれた。国連大使を経験したヘイリー氏がウクライナ支援の重要性を強調した一方、デサンティス氏は米国の財政的負担に疑問を投げかけ、欧州諸国が米国以上に負担すべきとした。また、ラマスワミ氏はウクライナが政治的に腐敗していたと指摘し、財政支援の必要性について納得していないと言明した。対中関係ではいずれの候補も強硬姿勢を示したが、元サウスカロライナ州知事のヘイリー氏と現フロリダ州知事のデサンティス氏の間では、互いに中国企業からの投資誘致に積極的だったと非難し合う場面も見られた。

国内問題では、インフレ、社会保障制度改革、人工妊娠中絶などが主要な議題となった。中でも中絶問題は、直前の11月7日にバージニア州で実施された州議会選挙で民主党が上下両院で多数を押さえる要因になったとされており、各候補者の立場に焦点が当たった(2023年11月9日記事参照、注2)。この点、米国主要メディアでは、ヘイリー氏が有権者全体を意識して、巧妙に立ち回ったと評価されている。同氏は、自身は中絶反対としつつも、連邦レベルで中絶を禁止する法案を可決することは事実上不可能であり、この問題で米国をこれ以上分断する必要はない、コンセンサスを探るべきだと主張した。ワシントン・ポスト紙が調査会社と実施した討論会直後の世論調査では、ヘイリー氏が最も良いパフォーマンスだったとする回答率が34%で1位となり、2位のデサンティス氏(23%)を引き離す結果になった。4回目の討論会は12月6日、アラバマ州タスカルーサで開催の予定だ。

(注1)ロン・デサンティス・フロリダ州知事、ニッキー・ヘイリー元国連大使(トランプ政権時)、実業家のビベク・ラマスワミ氏、クリス・クリスティ前ニュージャージー州知事、ティム・スコット上院議員(サウスカロライナ州)の5人。

(注2)そのほか、オハイオ州では、人工妊娠中絶権を保障する州憲法修正案が住民投票で可決されている。

(磯部真一)

(米国)

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