米11月雇用統計、労働需給緩和傾向の鈍化示す、中期的には緩和継続見込み

(米国)

ニューヨーク発

2023年12月11日

米国労働省が12月8日に発表した11月の雇用統計(2023年12月11日記事参照では、失業率は前月比0.2ポイント低下し、賃金も前月比で上昇幅が拡大するなど、このところ続いていた労働需給の緩和トレンドとは相反する結果となった。このことから、最近のインフレ鈍化傾向(2023年11月15日記事参照)などを踏まえて市場関係者の間で高まっていた2024年早期の政策金利の利下げ観測が大きく後退した。シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)による2024年3月時点の金利水準予測では、「現在の水準(5.25~5.50%)に据え置き」とする市場関係者が今回の雇用統計発表前から18ポイント増加し、過半数となった。

なお、米国連邦準備制度理事会(FRB)のジェームズ・パウエル議長は雇用統計発表に先立つ12月2日にアトランタで行われた講演で、「十分に景気抑制的なスタンスを達成したと確信を持って結論づける、あるいは金融緩和の時期について臆測するのは時期尚早だ。追加の金融引き締めが適切になる場合は、そうする用意がある」(ブルームバーグ12月2日)と発言するなど、引き締め的な金融政策を維持する姿勢を述べていることからも、今回の結果は、12月12~13日に行われる次回の連邦公開市場委員会(FOMC)会合でも、現在のスタンスを維持する補強材料となりそうだ。

ただし、新規雇用者数について詳細を見ると、製造業では、非耐久財を中心に大半の業種がマイナス、サービス業でも、小売業でマイナスとなっており、消費に近い分野の雇用は減速の兆しを見せ始めている。消費は家計資産の減少や教育ローンの返済再開などを背景として減速傾向が強まりつつあり(2023年11月22日記事参照)、サービス部門を牽引した1つの柱の外食サービスなどの分野にも、今後徐々に影響が及んでくると予想される。中期的にみれば、労働市場の緩和は続いていく可能性が高そうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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