米小売企業が第3四半期決算を発表、今後の見通しは景気不透明感から各社とも慎重

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月22日

米国小売り大手ウォルマートは11月16日、2023年第3四半期(8~10月期)決算を発表し、純売上高は前年同期比5.3%増の1,594億3,900万ドルとなった。また、2024年通期(2023年2月~2024年1月)の売上高見通しは5.0~5.5%増と、第2四半期時点の予想の4~4.5%増から上方修正した。米国では高インフレで食品など必需品の購入を優先する消費傾向が続いており、同社の売り上げの約半分が食料品や日用品から構成(2023年8月23日記事参照)されていることから、競合他社よりも好調な業績となった。ただし、ジョン・レイニー最高財務責任者(CFO)は決算発表時の電話会議で、10~11月の売上高には「多少ばらつきがある」とした上で、「90日前と比較して個人消費についてより慎重に考える理由がある」と指摘し、今後の個人消費を巡る不透明性に警戒感を示した。第4四半期は、食料品のインフレ率が歴史的な水準からさらに正常化するため、前四半期よりも売上高の伸びが緩やかになると予想している。

他方で、米国小売り大手ターゲットは11月15日、第3四半期(8~10月期)決算を発表し、純売上高が前年同期比4.3%減の250億400万ドルとなり、既存店売上高が2四半期連続で前年同期を下回った。販売は引き続き低調だが、第3四半期の粗利益率は27.4%で前年同期の24.7%から上昇した。値下げが少なかったことや、在庫と関連コストの低下に加えて、運賃・サプライチェーン・配送費用の低下が寄与した(CNN11月15日)。第4四半期の既存店売上高については1桁台半ばの減少を見込む。

ブライアン・コーネル最高経営責任者(CEO)は決算発表時の電話会議で、「全体として消費者は依然として支出を続けているが、金利の上昇、学生ローン返済の再開、クレジットカード債務の増加、貯蓄率低下などの圧力により、自由に使える収入が減少し、家計のトレードオフを余儀なくされている」と説明した。給料日まで不要不急の買い物を控える動きがみられるなど、物価上昇によって予算を有効活用しようとする消費傾向が明確に表れていると指摘した。

また、米国ホームセンターチェーン大手のホーム・デポは11月14日、第3四半期(8~10月期)の決算を発表し、純売上高が前年同期比3.0%減の377億1,000万ドルとなった。2023年度の1株当たり利益率が9~11%減とし、既存店売上高が前年同期比3~4%減少すると見込んでいる。ホーム・デポが年間売上高の減少を予測するのは、米国経済が大規模な住宅バブルで打撃を受けた2009年以降初めてとなる(AP通信11月14日)。

このように、景気の先行きを巡って不透明感が高まる中、各社とも先行きについては慎重な姿勢を示している。直近10月の米国小売売上高は前月比0.1%減と、7カ月ぶりに伸びがマイナスに転じ、識者からは今後は個人消費の勢いがさらに弱まるとの見方が示された(2023年11月16日記事参照)。

(樫葉さくら)

(米国)

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