マレーシア、COP28合意における化石燃料からの脱却、歴史的な転換点と評価

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年12月20日

マレーシアのニック・ナズミ天然資源・持続可能性相は12月14日、国連気候変動枠組み条約(UNFCCC)第28回締約国会議(COP28)の閉幕(2023年12月14日記事参照)を受け、COP28の成果である「UAE合意」は、気候変動への挑戦における歴史的な転換点とする声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

UAE合意は、多国間気候変動関連交渉の歴史で初めて化石燃料からの脱却に言及し、1.5度目標(注)に沿った温室効果ガス排出の削減に向けて足並みをそろえるものだと、声明はこれを評価。今回の画期的な決定は、気候変動が社会と経済に与える影響に対する集団的責任を明らかにし、持続可能な未来に向けた野心的な道筋を描くものだ。その上で、移行に向けた取り組みは、公正公平に、秩序正しく、かつUNFCCCとパリ協定が定める「共通だが差異ある責任の原則」に基づきすべての国が実施するべきだと強調した。マレーシアは、温室効果ガス排出量を2030 年までに、2005年比で45%削減する目標を掲げている。

またニック氏は、UAE合意には、気候変動の影響を大きく受ける脆弱(ぜいじゃく)な途上国を対象とした「損失と損害」(ロス&ダメージ)基金の運用に関する決定が含まれていることにも触れた(2023年12月8日記事参照)。複数の国が、基金への拠出を約束したことから、同基金も今回の合意の重要な成果の1つとして歓迎した。他方で、先進国はさらなる取り組みと資金提供を行う必要があるとも注文を付けた。

マレーシアの国を挙げた取り組みに関してニック氏は、2024年の早いうちに策定予定のマレーシアの長期低排出開発戦略(LT-LEDS)を通じ、ネットゼロ達成に向けて邁進(まいしん)することも表明。先に政府が発表したエネルギー移行ロードマップ(NETR)(2023年9月4日記事参照)の下で、電力供給量に占める再生可能エネルギー比率を2050年までに70%まで高める(2023年5月15日記事参照)ことで、エネルギーや産業セクターの脱炭素化を進めることをあらためて表明した。

(注)世界の気温上昇を産業革命の前と比べて、1.5度に抑える目標のこと。パリ協定で掲げられている。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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