米連邦議会下院が新つなぎ予算案を可決、政府閉鎖はいったん回避の見通し

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月16日

米国議会下院は11月14日、新たなつなぎ予算案を賛成336票、反対95票、棄権3票の賛成多数で可決した。2024年度歳出法案の審議が難航する中で、9月30日に成立したつなぎ予算の期限が11月17日に迫り(2023年10月3日記事参照)、政府機関が閉鎖(政府閉鎖)される事態の回避に向けて、マイク・ジョンソン下院議長(共和党、ルイジアナ州)を中心に新たなつなぎ予算が模索されていた。

新たなつなぎ予算には(1)ジョー・バイデン大統領が求めていたイスラエルやウクライナ向けの支援や、(2)共和党保守派が求めていた国境管理措置の強化や大規模な歳出削減といった、党派間で大きな対立となり得る項目はいずれも含まれていないこともあり、超党派での協力が実現した。

新たなつなぎ予算案では、農業、エネルギー・水、軍事建設・退役軍人、輸送・住宅・都市開発の4分野向けの資金が2024年1月19日まで、それ以外の8分野については2024年2月2日まで、それぞれ予算措置を延長する。このほか、低所得者向け食料支援プログラムなどが含まれる農業関連法案を2024年9月まで延長する条項なども盛り込まれている。

予算案が成立するためには、上院でも可決される必要がある。下院で可決された予算案は、既に上院に送付されており、週内に採決が行われる予定だ。上院で多数派を占める民主党のチャック・シューマー院内総務(ニューヨーク州)は既に同予算案への賛意を示していることから、政府閉鎖は回避される見通しだ(政治専門紙「ポリティコ」11月14日)。

当面の政府閉鎖は回避される見通しだが、2024年度歳出法案に関しては引き続き前途多難だ。例えば、現在下院で審議中の労働・福祉・教育歳出法案には、バイデン政権が新たに運用し始めている、価値ある教育への貯蓄(SAVE)プランなど学生ローンの負担軽減を目的とする措置(2023年9月12日記事参照)への予算配分を実質的に禁止する条項や、人工妊娠中絶に関する医療給付への予算配分を禁止する条項など、党派間で大きな隔たりがある内容が含まれている。加えて、下院共和党においては今回の新たなつなぎ予算案の審議では、大規模な歳出削減が含まれていなかったことなどを理由に93人が反対しており、ジョンソン議長にとって妥協の余地は狭まりつつある。これら法案が仮に下院を通過できたとしても、民主党が多数を占める上院との協議は難航必至で、引き続き予断を許さない状況が続きそうだ。

(加藤翔一)

(米国)

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