米教育省、学生ローンの新規返済プラン加入者数が400万人に達したと発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月12日

米国教育省は95日、学生ローンを世帯所得に基づく返済計画(IDRIncome Driven Repayment Plan、注)の中で新たに創設した、価値ある教育への貯蓄(SAVESaving on A Valuable Educationプランへの加入者数が400万人に達したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

学生ローンに関しては、ジョー・バイデン大統領がその返済負担が重すぎるため、多くの米国民が中間層の生活を送れていないとして問題視し、学生ローン免除(2023825日記事参照)やIDR運用実態の見直し(2023718日記事参照)など債務負担軽減措置を講じていた。SAVEプランもこうした取り組みの一環として、低所得者層向けに、822日から新たに運用が開始された。従来の低所得者層向けの返済計画であるREPAYEプランと比較して、(1)在学時の学生ローンは利率を10%から5%に半減、(2)借入額に応じた残債免除までの期間の短縮(借入額が12,000ドル未満の場合には20年から10年に短縮)、(3)返済免除対象者の拡大年収が貧困ガイドラインの150%の層から225%の層まで拡大、(4)月々に決められた返済額の範囲では支払い切れない利息分の支払い免除など、債務者により有利な内容となっている。教育省は、この新たなプランにより、一般的な借り手であれば年間1,000ドルを節約でき、借り入れ1ドル当たりの総支払額は平均して40%程度減少すると試算している。また、IDRの他のプランからの乗り換えにより恩恵を受ける対象者も多く、教育省によれば、上記(3)については100万人以上が追加で返済免除の対象となるほか、(4)についてはIDR利用者の70%が対象となる。

バイデン政権はこの新たなプランを普及することで、実質的な債務負担軽減につなげたい考えだ。IDRのうち、従来のREPAYEプランに加入している場合には、債務者による変更手続きなしに自動的にSAVEプランへ移行する。これに加えて、REPAYEプラン以外のIDR加入者やIDRを活用していない学生ローン利用者に対する普及啓発キャンペーンなどにも力を入れており、100万人近くが新規に加入したとしている。

米国の消費者は、新型コロナウイルス禍の間の余剰貯蓄を使い果たしつつあり、低・中所得者層を中心に所得環境が徐々に悪化している(202398日記事参照)。こうした状況下で、一時停止されていた学生ローンの返済は10月に再開される予定で、米国経済の根幹である個人消費の重しとなることが懸念されている。そのため、家計ローンの約10%を占める学生ローンの負担軽減が進むことは、米国経済にとっては朗報となるだろう。

(注)IDRには、REPAYEプランから移行するSAVEプランのほか、Pay As You EarnPAYE)プラン、Income-Based RepaymentIBR)プラン、Income Contingent RepaymentICR)プランの計4つのプランが存在する。

(加藤翔一)

(米国)

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