全米小売業協会、小売業におけるAI活用のための4つの原則を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年11月21日

全米小売業協会(NRF)は11月13日、小売業における人工知能(AI)の活用などに当たり、考慮すべき原則をまとめた「小売業におけるAI活用のための原則」を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注)。NRFによると、同原則は、小売業界のAIガバナンスと戦略立案を支援するもので、AIの適切かつ効果的なガバナンスを奨励するとともに、消費者の信頼を促進し、AI技術の継続的なイノベーションと有益な利用を促すことを目的としている。具体的には、小売業者がAIを利用する際に対処すべき、4つの原則(1.ガバナンスとリスク管理、2.顧客エンゲージメントと信頼、3.労働力における用途と利用、4.ビジネスパートナーの説明責任)が提唱されている(詳細は添付資料参照)。

なお、NRFは、ステークホルダーからの意見や、小売業におけるAIの利用に関するより広範な変化に基づいて、これらの原則とガイドラインを定期的に更新する。また、今後数カ月以内に、これらの原則を詳しく説明し、小売業者が同原則を事業に活用できるよう支援するレポートやガイドラインの作成を予定する。

小売業界では、生成AIを活用して生体認証による決済を可能とする取り組み(2023年7月27日記事参照)や、AIによる顧客データの分析・在庫管理を行う取り組みなど、業務効率化や顧客満足度の向上などを目的としたAI活用が急速に進展してきている。一方で、消費動向の調査を行うザ・フューチャー・オブ・コマースによると、こうした動きに対しては、顧客のプライバシーの保護や透明性の確保といった課題を指摘する声や、生体認証データを使用した競争力のさらなる強化が、さまざまな市場での競争を抑制する可能性があることを懸念する声などもあり、今後、小売業でのさらなるAI活用が予想される中でどのように規制を導入するかは業界にとって重要な課題となっていた。小売業界ではウォルマートが10月17日に独自の「責任あるAI誓約」を発表し、同社が責任を持ってAI利用を促進する6つのコミットメントを示すなど、一部の企業では先行して取り組みが進められていたが、今回の発表により小売業全体に拡がることが期待される。

(注)AI規制策定の動きは小売業にとどまらず、バイデン政権は、AIの安全性に関する新基準などの大統領令を公表(2023年11月1日記事参照)しているほか、議会でもAI規制の法案づくりが進む。また、英国政府主催で国際AIセーフティサミットが開催され、AIの安全確保に向けた国際的な連携を促進する宣言文書も採択されている(2023年11月2日記事参照)。

(樫葉さくら)

(米国)

ビジネス短信 d131a5e5b1c78f6c