AIセーフティサミット開幕、米中EUを含む29カ国・地域で共同宣言を公表

(英国、世界)

ロンドン発

2023年11月02日

英国で11月1日、AIセーフティサミットが開幕し(注1)、英国のミシェル・ドネラン科学・イノベーション・技術相が開会のあいさつを行った。ドネラン氏は、フロンティアAI(人工知能)(注2)の安全な開発と運用のために、適切な「ガードレール」とガバナンスの仕組みをつくり、人類の安全と安全保障を支える義務があると述べ、サミットを通じさまざまな主体が議論し、AIの方向性の決定に役立てるとした。

開会に先立ち、米国、中国、EU、日本のほか、中東、アフリカ諸国も含めた29カ国・地域による、共同宣言「AI安全に関するブレッチリー宣言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」も公表された。同宣言では、フロンティアAIの能力が完全に理解されていないことなどを背景に、意図的な悪用や意図しないコントロールの問題から、重大なリスクが生じる可能性があることを指摘。サイバーセキュリティーやバイオテクノロジー、偽情報といったリスクを特に懸念しているとし、フロンティアAIにより、重大もしくは壊滅的な損害が生じる可能性があるとした。その上で、潜在的なリスクと対処行動に関する理解を早急に深めることが必要とした。また、AIから生じるリスクの性質を踏まえ、国際協力を通じて対応することが最適だとした。さらに、AIに関連するリスクを考慮しつつ、利益を最大化するような、イノベーション推進および、相応のガバナンスと規制手段の重要性を各国が考える必要があるとした。国際会合などを通じ各国の協力を強化、維持するほか、リスクの特定や理解に向けた協力を他国にも拡大していくことも確認した。AIの安全確保にあたっては、国家、国際フォーラム、企業、市民社会、学術界が協力する必要があるとした。フロンティアAI開発企業については、自社のAIシステムに関して、安全性の確保への強い責任があるとした。

宣言では今後のAIセーフティサミットについても言及しており、英国政府は2024年前半に韓国でバーチャル開催(第2回)、2024年後半にフランスでの対面開催(第3回)をそれぞれ発表している。

このほか、英国政府は、サミットに合わせて国内のスーパーコンピュータへの投資やアフリカ諸国へのAI関連の支援なども併せて発表している(2023年11月2日記事参照)。

(注1)プログラムや参加者は英国政府ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを参照。

(注2)英国政府の定義によると、広範なタスクを実行可能で、現在最も進んだ人工知能(AI)のモデルが有する能力に匹敵、またはそれを超える能力を持つ高性能な汎用型AIモデル。

(山田恭之)

(英国、世界)

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