ドイツ・サプライチェーン・デー開催、デューディリジェンス法の非適用中小企業向けガイダンスも公開

(ドイツ)

調査部欧州課

2023年11月08日

ドイツ卸・貿易業協会(BGA)、ドイツ電子商取引・通信販売協会(bevh)、ドイツ資材管理・購買・物流協会(BME)および中小企業の団体であるミッテルシュタント連合(MITTELSTANDSVERBUND - ZGV)は10月20日、4団体共同のプレスリリースを発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますし、18日に共催した「第1回ドイツ・サプライチェーン・デー外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」の内容を報告した。

「ドイツ・サプライチェーン・デー」では、共催4団体のほか、連邦労働・社会省やドイツ貿易・投資振興機関(GTAI)、連邦経済・輸出管理庁(BAFA)などからの登壇者が、講演やパネルディスカッションを行った。テーマにはサプライチェーンに関する課題、中でも2023年1月施行のドイツの「サプライチェーン・デューディリジェンス法(LkSG)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注1)が取り上げられた。LkSGが適用され、人権や環境に関する注意義務(デューディリジェンス)が直接課されているのは、従業員3,000人以上の在ドイツ企業(2024年1月から従業員1,000人以上の在ドイツ企業に適用を拡大)だが、非適用の規模の中小企業(サプライヤー)も適用規模の大企業と取引があれば、当該適用企業に納品する物品・サービスに人権や環境関連のリスクがないことの証明を求められる機会が生じる。

登壇したBAFAのトルシュテン・ザーファリック長官は、LkSG適用企業に対して、LkSGによって自社のサプライヤーや仲介業者へ直接的に注意義務が課されているのではなく、自社に課される注意義務を転嫁しないよう注意を強調した。ミッテルシュタント連合のエッカート・シュバルツァー会長は、サプライチェーンのモニタリングはデジタル化と持続可能性という世界的潮流を背景に突出した意味を持つことを指摘し、中小企業は事業の長期的な成功のためにこの両方を考慮しなければならないとした。

BAFAはLkSG非適用の中小企業向けにガイダンスを作成

LkSGの履行確保を担当するBAFAは2023年6月、LkSGが課す注意義務を履行するためにLkSG適用企業が非適用企業(サプライヤー)に協力を依頼する場面に関するFAQを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます8月には適用企業と非適用企業の協力に関するガイダンスを公表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(注2)。同ガイダンスでは、LkSGは適用企業が注意義務を履行するために非適用企業に協力を求めることを想定している一方、LkSGは非適用企業に協力の義務を課していないとの基本的な枠組みを説明。その上で、適用企業と非適用企業が協力する場面は、(1)リスク分析(LkSG第5条、注3)、(2)予防措置(第6条)、(3)是正措置(第7条)、(4)苦情処理手続き(第8条)だとして、場面ごとに非適用企業が適用企業から求められるだろう事項と対応策を整理した(添付資料表参照)。リスク分析については、非適用企業が適用企業から納品物などに関するデータの提出を求められた場合の考え方を解説するなど、実務上の疑問に応える内容となっている。

(注1)ジェトロはLkSGの参考和訳を公表している。

(注2)FAQとガイダンスは英語版も公表されている(英語版FAQ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます英語版ガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

(注3)ジェトロはBAFAが作成したリスク分析の実施ガイダンスの参考和訳を公表している。

(二片すず)

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