チェコ政府、VWのEV用電池生産工場の誘致断念

(チェコ、ドイツ)

プラハ発

2023年11月09日

チェコのペトル・フィアラ首相は11月1日の記者会見で、政府が進めていたドイツ自動車生産大手フォルクスワーゲン(VW)の電気自動車(EV)向け車載バッテリーセル工場の誘致を断念したことを発表した。10月30日に行われたVWグループのオリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)との会談で、チェコ国内でのバッテリーセル生産工場(ギガファクトリー)建設の可能性について、VWが決定を留保したと述べた。

VWはEV用バッテリー生産拡大に向け、ドイツ、スウェーデン、スペイン(2022年3月28日記事参照)に続いて、カナダでも工場建設を決定している(2023年3月17日記事参照)。政府は欧州内でのさらなる生産拠点を誘致すべく、西部プルゼン市近郊の飛行場を用地に選び、VWとの交渉を行っていた。

フィアラ首相によると、チェコは欧州での追加投資先としては事実上唯一の候補地となっていた。しかし「VWは、EV販売が鈍化していることなどに鑑み、現時点では欧州でさらにギガファクトリーを建設する決定をすることができなかった」と同首相は説明している。

政府は、リチウムの採掘(注)、バッテリーの生産、EV完成車の生産という一連のサプライチェーンを国内で実現することを目指しており、その一環としてバッテリーセル生産工場誘致を優先事項の1つに掲げている。今後はVWによる決定を待たずに、他社のギガファクトリー誘致に集中する方針だ。ヨゼフ・スィーケラ産業貿易相が記者会見で述べたところによると、現在5社とバッテリーセル工場誘致に向けて交渉中で、各社の投資額は10億ユーロ単位と見積もられている。

政府はまた、今回の決定がVWグループでチェコに生産拠点を構えるシュコダ・オートの今後の展開に影響はないとのVWのコメントを発表している。

シュコダ・オートは11月1日付のプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、同社の将来はEVにあるとあらためて宣言し、バッテリー式気自動車(BEV)「エニヤック」の新モデルに続き、新たに大型のスポーツ用多目的車(SUV)のBEV「ビジョン7S」もチェコ国内で生産することが決定したと発表した。同社は、2027年までに56億ユーロをe-モビリティーに投資する見通しだ。

(注)チェコ電力は2020年3月、チェコ北部ウースチー州のリチウム鉱床の採掘権を有する地質調査会社ゲオメトの株式51%を取得すると発表。国家事業として鉱床採掘と、同州における加工拠点設立計画を進めている。

(中川圭子)

(チェコ、ドイツ)

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