米下院外交委、対外投資規制の超党派法案を発表

(米国、中国、北朝鮮、ロシア、イラン)

ニューヨーク発

2023年11月20日

米国連邦議会下院の外交委員会のマイケル・マコール委員長(共和党、テキサス州)とグレゴリー・ミークス少数党筆頭理事(民主党、ニューヨーク州)は11月9日、米国企業などによる対外投資を規制する超党派の法案を提出した。両議員は声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで、法案はジョー・バイデン大統領が8月に発表した大統領令(2023年8月14日記事参照)に基づくものだと説明している。

両議員が提出した法案は、大統領令と同じく、米国人(注1)による懸念国の事業体との特定の取引について、米国政府への届け出義務と禁止規定を設ける。懸念国には、大統領令で指定された中国(香港、マカオを含む)だけでなく、北朝鮮、ロシア、イランも含む。対象分野については、大統領令が対象とする半導体・マイクロエレクトロニクス、人工知能(AI)、量子情報科学・技術に加え、極超音速技術とスーパーコンピュータに関わる取引も制限する。対象取引は、懸念国の事業体の株式取得や同事業体との合弁事業、懸念国へのグリーンフィールド投資など、大統領令に基づいて検討されている規則とほぼ同じ範囲となっている。

今回の法案は、「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会(中国特別委員会)」のマイク・ギャラガー委員長(共和党、ウィスコンシン州)とラジャ・クリシュナムルティ少数党筆頭理事(民主党、イリノイ州)も共同提出者となっている。両議員は11月16日、今回の法案は中国の懸念企業に「米国の投資と(専門)知識が流出するのを阻止するための重要な一歩だ」との声明を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

議会では、対外投資規制に関する複数の法案が検討されており、上院ではボブ・ケイシー議員(民主党、ペンシルベニア州)らが提出した法案が付随する2024会計年度国防授権法案(NDAA)が既に可決されている(2023年8月16日記事参照)。同法は、特定の対外投資に関する届け出を義務付ける一方、禁止規定は含まない(注2)。マコール議員らは声明で、今回の法案はケイシー議員らのNDAAを強化するものだと指摘した。

対外投資に関する大統領令を巡っては、財務省が実施規則案を作るため、9月末までパブリックコメントを募集外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていた。パブコメでは産業界から、規制の範囲と適用対象の明確化や、規制実施における他国との協調などを求める意見が寄せられた。バイデン政権はパブコメの内容を踏まえ、議会の動向も見ながら、規則案を練っていくとみられる。

(注1)米国市民、永住者、米国の法律または米国内の管轄権に基づいて組織された事業体(米国外の支社も含む)を指す。

(注2)議会に提出されている法案や大統領令に基づいて検討されている規則の内容については、2023年10月2日付地域・分析レポートも参照。

(甲斐野裕之)

(米国、中国、北朝鮮、ロシア、イラン)

ビジネス短信 0817e6e828ceded6