第3四半期の米新車販売は前年同期比16.3％増、EVシェアは9.6％に増加

モーターインテリジェンスの発表（10月5日）によると、米国の2023年第3四半期（7～9月）の新車販売台数は、前年同期比16.3％増の398万1,819台となった（添付資料表1参照）。在庫状況の改善と、買い控えによる消費者の繰り越し需要が、市場を刺激したとみられる。市場調査会社のJDパワーによると、9月時点での業界全体の在庫台数は、前年同期比で36.5％増加した。ただし販売台数は、2019年同期比では7.9％減少しており、同20.9％減となった前年に比べ減少幅は縮小したものの、新型コロナウィルス禍前の規模には回復していない。

第3四半期の新車販売台数を部門別にみると、乗用車が前年同期比13.8％増の82万6,243台、小型トラックが17.0％増の315万5,576台と、いずれも2桁増になった。全新車販売に占める小型トラックのシェアは、過去3番目に大きい79.2％となり、消費者の大型志向が続いている。

主要メーカー別にみると、ステランティス以外、全てで増加した（添付資料表2参照）。ゼネラルモーターズ（GM）は、スポーツ用多目的車（SUV）「トラックス」やピックアップトラック「シルバラード」「シエラ」が好調で、前年同期比21.2％増の66万9,234台と伸びた。次いでトヨタが、新たに市場投入したSUV「グランドハイランダー」のほか、乗用車「カローラ」、SUV「RAV4」など人気モデルが順調に伸び、12.2％増の59万296台となった。フォードは、ピックアップトラック「Fシリーズ」「マーベリック」、SUV「ブロンコスポーツ」が押し上げ、7.7％増の49万7,108台だった。ステランティスは、ブランドではクライスラー以外で伸びず、モデル別ではピックアップトラック「ラム」「グラディエーター」、SUV「チェロキー」などが減少して1.3％減の38万2,195台となった。ホンダはSUV「CR-V」、乗用車「シビック」「アコード」など人気車種が伸びを押し上げ、52.7％増の33万9,143台、現代はSUV「ツーソン」やバッテリー式電気自動車（BEV）のSUV「アイオニック5」などが好調で、10.2％増の21万9,961台、日産はSUV「ローグ」「セントラ」が伸びて、40.8％増の21万6,878台となった。起亜はミニバン「カーニバル」やSUV「ニロ」が好調で、13.8％増の21万341台、スバルはSUV「フォレスタ―」などが好調で18.8％増の16万3,131台だった。EVメーカーのテスラは、BEVのSUV「モデルY」が6割増と大幅に伸びたことで19.5％増の15万6,621台となった。フォルクスワーゲン（VW）は、乗用車「ジェッタ」などが伸び、6.5％増の14万9,005台だった。

EVシェアは右肩上がり、第4四半期は高金利、ストライキの影響に懸念

第3四半期の、ハイブリッド車（HEV）、プラグインハイブリッド車（PHEV）、BEV、燃料電池車（FCV）を含む電動自動車の販売台数(注)は、前年同期比68.8％増の71万2,952台となった。また、電動自動車からHEVを除いたクリーンビークルは、54.8％増の38万2,543台となり、ガソリン車を含む全販売台数に占める割合は、前年同期の7.2％から9.6％に増加した。

今後の販売見通しに関して、コックスオートモーティブのチーフエコノミスト、ジョナサン・スモーク氏は「1年前は在庫が限られていることが(販売を押し下げる)主な要因だったが、現在は金利、景気、消費者のクレジットの信用状況が課題となっている。これらは、第4四半期の需要が引き続き好調あるいは改善するための、良い兆候ではない」との見方を示している。自動車情報サイトのエドマンズ・ドットコムによると、2023年第3四半期の自動車ローンの平均金利は、前年同期から3ポイント上昇し、2007年第2四半期以来の高水準である年率7.4％となった。さらに、全米自動車労働組合（UAW）が、デトロイト3（GM、フォード、ステランティス）の生産拠点で9月15日から実施しているストライキが、販売に与える影響も懸念されている（2023年9月19日記事参照）。格付け会社のS＆Pは、UAWがストライキを開始した3工場での損失生産台数は、1日当たり4,000台以上に上ると試算しており、長引けばその影響は数十万台に及ぶとみている。GMは10月5日に、ストライキにより第3四半期に発生したコストは既に2億ドルに達したと発表し、金融機関との間で60億ドルの新規融資枠を確保するなど、事業運営にも影響が及んでいる。

（注）モーターインテリジェンスが発表した1～9月までの販売台数から、上半期の販売台数を差し引いたもの。

（大原典子）