米薬局チェーン大手ライト・エイド、米連邦破産法第11章の適用申請

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月17日

米国薬局チェーンのライト・エイド(本社:ペンシルベニア州フィラデルフィア市)は10月15日、ニュージャージー州地区連邦破産裁判所に、米国連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は併せて、企業再建を専門とするジェフリー・スタイン氏を新たな最高経営責任者(CEO)と最高事業再構築責任者(CRO)に任命したことも発表した。今後は事業運営維持に向けて、(1)複数の債権者から計34億5,000万ドルの新規融資の確保、(2)不採算店舗の閉鎖、(3)一部事業部門の売却などを通じて、業績の立て直しを目指す予定だ。

1962年にリサイクルショップとして創業したライト・エイドは、複数のドラッグストアを買収することで、全米17州で2,000店舗以上の小売店を展開する米国第3位の薬局チェーンとなった。しかし、こうした大規模な買収に伴う財務状況の悪化に加え、(1)近年、同社の売り上げ改善要因となっていた新型コロナウイルスのワクチンや検査に対する需要が減少したことや、(2)同社の会員数の減少、(3)同社が法的要件を満たさない鎮痛剤を意図的に処方し、オピオイド問題(注)のまん延に加担したとして多くの訴訟に直面し、多額の訴訟費用が必要となったこと、(4)アマゾンやターゲット、ウォルマートといった小売業者が日用品などの生活必需品を低価格で販売し、迅速かつ便利な配送サービスを提供していることで、消費者は薬局よりも大手小売業者を選択する傾向が強まっていることなどの要因が重なり、経営不振が続いていた(「ウォールストリート・ジャーナル」紙電子版10月15日、CNBC10月15日)。こうした財務状況の悪化を受け、同社は破産申し立て前から店舗閉鎖を進め、最盛期の半分程度にまで経営規模を縮小してきた。

なお、「あまりにも多くの店を閉鎖したため、(消費者は)何かが必要になった場合、必ずしもライト・エイドの店舗が近くにあるとは限らないため、競合店に行くことになる」と、急速な店舗閉鎖が競争力の低下につながったとの指摘もある(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版10月15日)。今回の再建計画でも、不採算店舗の閉鎖が含まれているが、どの程度を閉鎖するかについては慎重に検討を進めているもようだ。

米国の破産申請データを提供するエピック・バンクラプシーによると、米国企業による米連邦破産法第11章の申請件数は2023年1~9月期には前年同期比61%増の4,553件(2023年10月11日記事参照)と増加傾向にあり、特に消費者の所得環境に左右されやすい小売業者は苦境に立たされつつある(2023年10月12日記事参照)。景気の先行き不透明感が増している中で、経営破綻に陥る企業の数は今後も増える可能性がある。

(注)オピオイド(opioid)とは、ケシの実からから採取する天然由来の有機化合物と、そこから生成する化合物の総称。米国では違法薬物のヘロインなどを除き、一定以上の疼痛(とうつう)を伴う疾患に対し、医療機関で処方される処方薬だ。しかし、同時に常習性が高く、長期の服用や多量摂取で依存症を引き起こし、最悪のケースでは死に至るといった深刻な副作用を伴うことから問題となっている(2019年9月17日付地域・分析レポート参照)。

(樫葉さくら)

(米国)

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