米企業の2023年1~9月の破産件数、前年同期比で17%増加、個人の破産件数も上昇

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月11日

米国の破産申請データを提供するエピック・バンクラプシーが10月3日に公表したプレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、2023年1~9月の米国企業による破産申請件数は1万8,680件で、2022年同期の1万5,955件から17%増加した。このうち、米国連邦破産法第11章(Chapter 11、日本の民事再生法に相当)の申請件数は前年同期比61%増の4,553件となり、景気の先行き不透明感を背景に、多くの企業が苦境に立たされている状況だ。

特に小売業については、2023年1~9月の間に、生活雑貨販売のベッド・バス・アンド・ビヨンドやウェディングドレス販売のデイビッド・ブライダル、パーティー用品専門店のパーティー・シティなどの大手小売りが破産した。

小売企業の破産要因について、大手格付け会社フィッチ・レーティングスの米国レバレッジド・ファイナンス・チームのシニアディレクター、エリザベス・ハン氏は「小売業の売り上げの多くは消費者の裁量次第というところがあり、景気が後退した場合、あるいは景気が不透明な場合、売り上げが減少することになる」と述べ、景気不透明感による低調な業績を指摘した。同氏はまた、サプライチェーンや在庫の問題、インフレなどのマクロ経済的な懸念が小売業者にも影響を与えているとも指摘した(「リテールダイブ」10月2日)。

また、2023年1~9月の個人による自己破産の申請件数は31万3,458件となり、2022年同期の26万8,884件から17%増加した。個人の破産を対象とする連邦破産法第13章(注1)の申請件数は19%増の13万1,236件に達し、連邦破産法第7章(注2)の申請件数は15%増の18万1,719件となった。

こうした傾向について、米国破産協会(ABI)のエクゼクティブ・ディレクター、エイミー・クアッケンボス氏は「新型コロナ禍前の水準を依然として下回っているが、破産の申請件数、現在の経済環境において、経済的に困窮している家計や企業が直面している困難な課題と、債務負担の増大を示している」「苦境にある個人と企業は、金利上昇、インフレ、借り入れコスト上昇の中で、破産によって自らを安定させる命綱を確立している」と述べている。

ニューヨーク連邦準備銀行によると、2023年第2四半期における米国の消費者のクレジットカード残高が初めて1兆ドルを超え、過去最高の1兆300億ドルを記録した。事実上、債務不履行に陥っていると見なされる債務者の比率(注3)も5%を超えた。10月には学生ローン返済の負担(2023年10月6日記事参照)が加わるため、多くのアナリストは年末商戦への期待を弱めている(「リテールダイブ」10月4日)。

(注1)裁判所の監督下にある債務者が、これまでを見直し、債務返済計画を立て3~5年の期間をかけて返済することを可能にする。

(注2)破産管財人を任命し、清算できる財産を選別して、債務者へ支払う。その資金が使い果たされた後、残りの債務は免除される。

(注3)90日以上、クレジットカードの支払いを延滞している深刻な債務者を指す。

(樫葉さくら)

(米国)

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