欧州委、マイクロプラスチック汚染対策としてペレットの放出防止規則案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2023年10月18日

欧州委員会は10月16日、EUとして初めて、プラスチックペレットの意図しない放出によるマイクロプラスチック汚染の予防を目的とした規則案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。EUは近年、プラスチックによる環境汚染対策を強化しており、特定の使い捨てプラスチック製品の流通を禁止する指令(2021年6月7日記事参照)やマイクロプラスチックを意図的に添加した製品を原則販売禁止にする規則(2023年10月4日記事参照)が既に施行されている。

今回の規則案は、意図しないマイクロプラスチック汚染の大きな原因の1つであるプラスチックペレット(注)の取り扱いに関して、事業者に確実な予防措置の実施を求める。欧州委は同規則案の適用により、プラスチックペレットの放出量を最大74%削減できるとしている。同規則案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

同規則案の対象は、EU域内でプラスチックペレットを取り扱う事業者とEU域内でプラスチックペレットを運送するEU域内外の輸送事業者だ。措置の内容は事業者によって異なる。

取扱事業者に対しては施設ごとに、規則案付属書Iに沿ったリスク評価計画を策定し、同計画に基づく放出防止・封じ込め措置を実施することを求める。同計画と、同計画が同規則案に適合している旨の自己宣言を加盟国当局に通知することを義務付ける。リスク評価計画は、常に最新の状況にしておく必要がある。零細・小規模取扱事業者の施設と、プラスチックペレットの年間取扱量が1,000トン未満の施設を運営する中規模・大規模取扱事業者は、施設ごとに、リスク評価計画および適合性に関する自己宣言を5年ごとに更新する。

一方、プラスチックペレットの年間取扱量が1,000トン以上の施設を運営する中規模・大規模事業者は、施設ごとに、リスク評価計画の適合状況に関する内部評価を毎年実施しなければならい。さらに、中規模・大規模取扱事業者は、年間1,000トン以上のプラスチックペレットを取り扱う施設ごとに、リスク評価計画の策定および同計画に基づく措置の実施が付属書Iに適合している旨の認証を、独立した機関から取得しなければならない。

輸送事業者に対しては、荷揚げ・荷下ろし、輸送、清掃・メンテナンス時に、付属書IIIが規定するプラスチックペレットの放出予防措置の実施を義務付ける。

このほか同規則案には、標準化機関に対し、加盟国間で調和されたプラスチックペレット放出量の見積もり方法の策定を求める規定もある。化学物質の登録、評価、認可、制限(REACH)に関する規則は既に、取扱事業者に対し、プラスチックペレットの放出量の見積もりを管轄する加盟国当局に毎年報告することを義務付けている。標準化された見積もり方法の策定後は、取扱事業者はこの見積もり方法に基づく報告が求められる。

(注)マイクロプラスチックは、大きさが5ミリ未満のプラスチックの粒子や細片。プラスチックペレットは、リサイクル製品の原材料となるもので、使用済みプラスチックを細かく砕いて異物を除去・洗浄・乾燥し、粒状にしたものを指す。

(吉沼啓介)

(EU)

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