欧州委、使い捨てプラスチック製品の流通禁止を前に指針発表

(EU)

ブリュッセル発

2021年06月07日

欧州委員会は5月31日、2019年7月に発効した「特定プラスチック製品の環境負荷低減に関わる指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(注)の一部適用開始を前に、同指令の解釈や実施に関するガイドライン(指針)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

EU各加盟国が当該EU指令(2019年5月22日記事参照)を国内法制化することで、7月3日から指令の一部適用が開始される。指令は特定の使い捨てプラスチック製品について、消費削減や市場流通規制、製品設計、ラベル、拡大製品者責任などに関するさまざまな措置の制定を加盟国に求めるものだ。

一部適用が開始されるのは、次の9種の使い捨てプラスチック製品とオキソ分解性プラスチック製の全製品の市場流通禁止措置。

  • 綿棒の軸
  • カトラリー(ナイフ、フォーク、スプーン、箸)
  • ストロー
  • マドラー
  • 風船棒
  • 発砲スチロール製食品容器
  • 発泡スチロール製飲料容器(キャップ・ふたを含む)
  • 発砲スチロール製飲料用カップ(カバー・ふたを含む)

今回発表のガイドラインは、法的拘束力を持つものではないが、指令に含まれる「プラスチック」や「使い捨て」などに関する定義や、市場流通が禁止される9種の使い捨てプラスチック製品の定義、その定義の射程に入る製品を例示している。なお、オキソ分解性プラスチック製の製品に関しては、使い捨てのものに限定せず、また生分解性かを問わず、全て指令の対象となることも明記している。

また、特定の使い捨てプラスチック製品(飲料用カップ、生理用品、ウェットティッシュ、フィルター付きたばこ製品など)に対するプラスチックの含有情報や廃棄物管理方法などに関するラベル表示の義務化も7月3日に開始される。欧州委は既にラベル要件に関する実施規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択しており、ガイドラインにはこうした製品の定義なども含まれた。

非リサイクルプラスチック量に基づく加盟国分担金も導入へ

プラスチック関係では、加盟国の新たな分担金制度も本格的に始動する。これは、復興基金の財源であるEU名義の共同債の返済に向けたEUの新たな独自財源として、リサイクルされなかったプラスチック量に基づいて加盟国に分担金を課す制度で、2020年7月の欧州理事会(EU首脳会議)で導入方針が決まった(2020年7月21日記事参照)。EU理事会(閣僚理事会)は4月に、この制度の詳細を規定した理事会規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを採択しており、同規則は1月にさかのぼって適用を開始していた。ただし、加盟国分担金の計算方法の規定に関しては、全加盟国の批准が必要な独自財源決定に規定されていたため、この決定が5月31日に発効(2021年6月2日記事参照)したことから、今回の新たな分担金制度の導入準備が整ったかたちだ。

(注)同指令の詳細は、調査レポート「欧州グリーン・ディールの概要と循環型プラスチック戦略にかかわるEUおよび加盟国のルール形成と企業の取り組み動向」を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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