バイデン米大統領、学生ローン一部免除の対象者が360万人に達したと発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年10月06日

米国のジョー・バイデン大統領は10月4日、学生ローンの運用見直しに伴い、新たに約12万5,000人、約90億ドル分が免除の対象となったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。これにより、累計で約360万人、約1,270億ドル分が免除されることになる(添付資料表参照)。

新たに免除対象となった約12万5,000人の内訳は、世帯所得に基づいた連邦学生ローン返済計画(IDR)の運用実態見直しに伴って特定された(2023年7月18日記事参照)5万1,000人、公共サービスローン(PSLF)の運用見直しにより特定された5万3,000人、高度または永続的な障害を抱え、社会保障局とのデータ照合で特定された2万2,000人となる。

バイデン政権は、今回の措置を含む学生ローンの免除や、借り手に有利なプランの創設(2023年9月12日記事参照)など、学生ローンの負担軽減に向けてさまざまな措置をこれまで講じてきた。だが、10月1日から再開された学生ローン返済に伴う影響緩和の観点からは、効果は限定的となる可能性が高い。

連邦学資援助局によると、学生ローンの借り手は2023年3月時点で4,360万人、負債残高は1兆6,400億ドルに上り、新型コロナウイルス禍以前の時点では、借り手の約3分の1が延滞または債務不履行に陥っているとされている(2021年8月12日記事参照)。ニューヨーク連邦準備銀行(FRB)によると、事実上、債務不履行に陥っていると見なされる債務者(注)の比率は新型コロナ前の2019年平均で約9.4%に上っており、この比率を現在の借り手の数と単純に掛け合わせると、約410万人となる。今回発表した免除対象者の360万人という数値は同債務者の多くをカバーできる計算になるが、延滞または債務不履行に陥っている残りの約1,000万人については、延滞などを繰り返してしまう可能性が高そうだ。バイデン大統領は中間層や労働者層の負担軽減を目的に、当初は約2,000万人に対して学生ローンを一部免除することを想定していたが(2022年8月25日記事参照)、この範囲をカバーするにはさらなる取り組みの強化が必要だ。また、民間機関エデュケーション・データ・イニシアチブによると、学生ローンの月々の平均支払額は503ドルと推計されており、これまでの措置でカバーできていない中間層に対する負担も今後重くのしかかってきそうだ。

(注)90日以上教育ローンを延滞している深刻な債務者を指す。

(加藤翔一)

(米国)

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