米教育省が学生ローンの一部免除を発表、制度の運用実態を見直し

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月18日

米国教育省は7月14日、世帯所得に基づいた連邦学生ローンの返済計画(IDR:Income Driven Repayment Plan)の運用実態を精査し、80万4,000人が保有する390億ドルの学生ローンを免除すると発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。なお、同省は免除対象者の特定を2024年まで継続するとしており、今後さらに対象者が増加する可能性もある。

IDRは、世帯所得に応じて20年または25年(240回または300回)の支払いを終えた場合に、その残額についてローンを免除する制度だが、支払い回数の記録管理の杜撰(ずさん)さなどにより、必要以上の支払いを求められるケースがあると指摘されていた。ミゲル・カルドナ教育長官は「バイデン政権は本制度の運用の誤りを正すために歴史的な一歩を踏み出した」と述べ、学生の経済的な負担を軽減するための政権の取り組みを強調した上で、高等教育の競争条件を公平にすることが狙いだと説明した。なお、同省は5月にも、教員、ソーシャルワーカー、軍人などの公職者向けの学生ローン(PSLF)に関して、61万5,000人以上を対象に420億ドルの免除を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますしていたが、今回の措置はIDRを利用する全ての人が対象となる。

ジョー・バイデン大統領はこれまでも、学生ローンの返済負担が重すぎるため、多くの米国民が中間層の生活を送れていないことなどを理由に、学生ローンの免除措置や支払い停止措置などを打ち出していた(2022年8月25日記事参照)。一方、連邦最高裁判所が6月30日に連邦議会の承認が必要だとして、連邦政府の債務免除措置を認めない判断を示していたことから、代替措置が模索されていた。今回は、IDRの運用に焦点を当て、実質的に学生ローンの返済負担の軽減を実現したかたちだ。

(加藤翔一)

(米国)

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