EU、Fガスとオゾン層破壊物質のさらなる規制強化で合意

(EU)

ブリュッセル発

2023年10月11日

EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会は10月5日、2050年までに気候中立を目指す欧州グリーン・ディールの一環として、フッ素化ガス(Fガス)とオゾン層破壊物質(ODS)の規制を強化する現行規則の改正案について暫定的な政治合意に達したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。今回合意された内容は、一部修正はあるものの、おおむね欧州委員会の当初案(2022年4月7日記事参照)に沿うものだ。今後、EU理事会と欧州議会での正式な採択を経て、施行される見込み。なお、今回合意されたテキストは現時点では公表されていない。

Fガスについては、2015年に適用を開始した現行のFガス規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、Fガスの約9割を占めるハイドロフルオロカーボン(HFC)を対象に、生産者や輸入事業者に対する割り当て分のみの販売を認めることで、販売量を2030年までに2015年比で79%に段階的に削減する総量規制が既に導入されている。また、地球温暖化係数(GWP)の高いFガスを使用した製品の販売も禁止されている。

今回の合意によると、HFCの総量規制を引き上げ、2030年までに2015年比で95%削減、2050年までに100%削減する。これは、2050年までに97.6%削減するとしていた欧州委案より厳格なものだ。また、HFCの販売割り当てにおいては、2025年から二酸化炭素(CO2)換算で1トン当たり3ユーロを課す。一方で、EUが半導体法(2023年8月2日記事参照)を制定し、域内生産の拡大を目指す半導体の製造に関連するHFCについては、総量規制の適用除外の対象に新たに追加する。さらに、HFCの生産に関しても、欧州委が割り当てる生産権に基づく制度を新たに導入し、2036年までに2011~2013年の年間平均生産量の15%まで削減する。

両機関による交渉の焦点となったFガスを含む製品の販売禁止措置の対象拡大時期に関しては、環境に配慮した代替品の有無などを考慮して、2025~2035年までに順次禁止することで合意した。特に、脱炭素化において活用が求められるヒートポンプやグリッドに使用されるスイッチギアについては、Fガスを含む場合の販売禁止措置の実施時期が欧州委案より後ろ倒しにされた。12キロワット以下のモノブロック型(一体型)ヒートポンプとエアコンは2032年までに、スプリット型ヒートポンプとエアコン(注)は2035年までに、中電圧のスイッチギアは2030年までに、高電圧のスイッチギアは2032年までに、それぞれ販売禁止となる。また、Fガスを含むヒートポンプの販売禁止措置が、ロシア産化石燃料からの脱却計画「リパワーEU」(2022年9月1日付地域・分析レポート参照)におけるヒートポンプの設置目標の達成を危うくする場合には、総量規制におけるヒートポンプを対象にした割り当ての追加実施を一時的に可能にする。

ODSについては、現行のODS規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、大部分のODSの生産、販売、使用は既に禁止しており、例外的に厳格な管理下でのみ使用を認めている。今回の合意によると、ODSが使用されている既存の断熱材に関して、建物の改装、解体時におけるODSの回収あるいは廃棄が新たに義務付けられる。また、化学分野でのODSの使用についても、より厳格な規制が課される。

(注)スプリット型とは、室内機および室外機で構成されるもの。

(吉沼啓介)

(EU)

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