欧州委、Fガス、オゾン層破壊物質、汚染物質の規制強化に向けた改正案を発表

(EU)

ブリュッセル発

2022年04月07日

欧州委員会は4月5日、2050年までの気候中立を目指す欧州グリーン・ディールの一環として、冷蔵庫、エアコンなどに使用されるフッ素化ガス(Fガス)と、オゾン層破壊物質(ODS)の規制強化に向けた改正案(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した。

2015年に適用を開始した現行のFガス規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、Fガスの約9割を占めるハイドロフルオロカーボン(HFC)の総量規制(2030年までに2015年比で79%の段階的削減)と生産者および輸入業者による割当分のみの販売を認める制度を導入。また、地球温暖化係数(GWP)の高いFガスを使用した製品の販売を禁止している。Fガス規則の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、HFCの総量規制をさらに強化。気候への潜在的な影響を基準に、2050年までに2015年比で97.6%の削減を規定する。また、一部の分野ではFガス使用製品を完全に禁止するなど、販売禁止の対象製品(改正案付属書IV参照)も拡大する。さらに、ガス漏れ検査、記録保管、廃棄方法のほか、取引規制の執行を強化するために認証制度やラベル義務なども改定する。

ODSに関しては、現行のODS規則外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますにより、大部分のODSの生産、販売、使用は既に禁止されており、例外的な使用については厳格な管理の下でのみ認められている。そこでODS規則の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)では、この規制枠組みは維持しつつ、過去に合法的に販売されたODSを含む製品からのODSの排出防止に重点が置かれている。例えば、ODSを含む断熱材を使用した建物の改築や解体の際には、ODSの回収あるいは廃棄が義務付けられる。

汚染物質の規制強化、対象拡大など産業排出指令の改正案も発表

欧州委は同日、硫黄酸化物、窒素酸化物、アンモニウム、メタン、水銀などの汚染物質を規制する産業排出指令の改正案PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)も発表(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。これらの汚染物質は、発電、セメント製造、廃棄物処理、焼却、家畜の集約型飼育などの産業から排出されており、現行の産業排出指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、約3万カ所の大規模産業施設と約2万カ所の大規模養鶏・養豚場を対象に、排出許可の要件を設け、生産設備などに対して業界関係者などともに設定する「利用可能な最良の技術(BAT)」の導入を求めている。

今回の改正案では、規制強化・対象拡大に加えて、技術革新の推進と、その導入に向けたインセンティブの付与などを目的としている。まず、汚染物質の規制に関しては、今後もBATに基づくものの、加盟国の規制当局が排出許可を更新する、あるいは新たな要件を設定する際には、より厳格な規制値を使用することが求められる。また、対象となる産業活動・施設を拡大し、石炭などのエネルギー鉱物を除く、金属、レアアースなどの採掘、成長分野である電気自動車用バッテリーの大規模製造施設、養鶏・養豚場だけでなく、養牛場も新たに加え、150家畜単位(LSU、注)以上の畜産施設が対象となる。さらに、新興技術のBATへの採用に向けて、早期実用化が可能な新興技術を特定、評価する「産業変革と排出に関するイノベーションセンター(INCITE)」を設置するとともに、新興技術の試験導入のための例外措置を拡大する。

これらの法案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。

(注)家畜の飼養密度を表す指標として用いられる係数。例えば、乳牛:1LSU、体重50キログラム以上の繁殖雌豚:0.5LSU、産卵鶏:0.014LSUなどとなっている。

(吉沼啓介)

(EU)

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