フィッチ、バングラデシュの格付け見通しを引き下げ

(バングラデシュ)

ダッカ発

2023年10月19日

米国格付け大手のフィッチ・レーティングス(フィッチ)は9月25日、バングラデシュの長期外貨建て発行体デフォルト格付け(Long Term Foreign Currency Issuer Default Rating:LT IDR)について、見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ、格付けは「BBマイナス」に据え置くと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。BBマイナスは投資適格に該当するBBBマイナスの3段階下で、投機的格付け(注)に位置付けられる。

同社は見通し引き下げの理由として、バングラデシュは対外的なリスクに対するバッファー(緩衝)の低下により、脆弱(ぜいじゃく)性が高まっていること、また為替制度をはじめとする政府の段階的な変更措置や、国際融資機関からの継続的な支援が、同国の外貨準備高の減少や自国通貨タカの対ドル安に向けた緊張の解消には不十分であることを挙げた。一方、対外債務の返済が安定的であることに加え、依然として良好な経済成長見通し、政府債務が他の開発途上国との比較において低いことを背景に、BBマイナスに据え置いた。

同社は外貨準備高に関して、輸入の増加と中央銀行によるドル売りの為替市場介入により減少圧力が高まり、IMF融資にひもづく6月末の外貨準備目標(ネット値、244億6,200万ドル)は達成できなかったとし、2023年末の外貨準備高は対外決済の3カ月分(「BB」格付け国の中央値は4.4カ月分)、2024年から2025年にかけては2.6カ月分まで減少すると予測。現在の同ネット値の外貨準備高(非公開)は180億ドルを下回るという見方も報じられる中(「デイリー・スター」紙10月16日)、10月17日現在、現地訪問中のIMF視察団は、中央銀行関係者などとの間で、融資実行に係る議論を10月19日までに行うもようだ。

また、関連する課題として、単一の為替制度の導入(2023年8月4日付地域・分析レポート)はその実行性が不透明であること、高止まりが続くインフレが(中銀による市場介入を招き)為替レートの柔軟性を妨げている、と指摘する。他方、同社によると、郷里送金や政府支出・投資と堅調な衣料品輸出による民間消費の底上げにより、バングラデシュでは引き続き高い経済成長が見込まれ、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)のGDP成長率は6.5%、2024/2025年度は7.1%と予測する。

なお同国は、2023年5月にムーディーズによるソブリン債の信用格付けの変更(2023年6月29日)、7月にはS&Pにより長期信用格付け見通しが変更(2023年8月7日記事参照)されている。

(注)相対的に信用リスクの低い「投資適格格付け」と比べ、債務不履行の可能性が高いとされる。

(山田和則)

(バングラデシュ)

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