ムーディーズ、バングラデシュの格付けを「B1」に引き下げ
(バングラデシュ)
ダッカ発
2023年06月29日
米国の格付け会社ムーディーズは5月30日、バングラデシュのソブリン債の信用格付けを「Ba3」から「B1」に引き下げた。格付けの見通しは「安定的」とした。
格付け引下げの理由としてムーディーズは、バングラデシュの対外的な脆弱(ぜいじゃく)性や流動性リスクの継続など、ウクライナにおける戦争に端を発する世界経済の不安定さに影響を受けやすい国家的脆弱性を指摘した。また、ドル不足や外貨準備高の減少により、輸入抑制(2022年7月19日記事参照)やそれに伴うエネルギー不足(2023年6月5日記事参照)などの不安定要因についても言及。さらに、複数の為替レートが生じるシステムおよび通貨タカ安のコントロール(2023年4月12日記事参照)、利率上限の設定など、従前にはみられなかった経済政策がさらなる市場の歪(ゆが)みを生じさせているとも指摘した。
今後の見通しとして、国際融資機関からの長期貸し付けや支援が国家財政の圧迫を緩和するとしつつ、新型コロナ禍前と比較して対外負債の比率が上昇することで財政が弱体化し、構造的な財政改革を実現するまでに数年を要するとした。例えば外貨準備高は、2023/2024年度(2023年7月~2024年6月)には安定するとしつつも、今後2~3年は300億ドルを下回り、新型コロナ禍前の水準には戻らないと予測。外貨準備高ネット値は、グロスの残高のうちEDF(注)向けの割り当てを明示するなど、IMFの基準に沿って算出することで200億ドル程度まで下がるとした。また、財政赤字は相対的に拡大し、政府の債務負債は2026年6月末(2025/2026年度末)にはGDPの40%程度を占めること、IMFの要請する国家歳入の改善・税収強化(2023年5月18日記事参照)には時間を要すると分析する。
他方、ムーディーズは「安定的」見通しの背景として、上述の外部金融による資金調達に加え、国際的に競争力を有する、縫製産業が牽引する経済の回復力(レジリエンス)を挙げた。なお、米国の同大手のフィッチ・レーティングスやスタンダード・アンド・プアーズ・グローバル(S&P)は2022年に、同国の信用格付けの据え置きを発表している。
(注)Export Develop Fund、中央銀行が運用する輸出志向型産業を対象とした原材料輸入向けのファンド。
(安藤裕二、山田和則)
(バングラデシュ)
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