S&P、バングラデシュの長期信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げ
(バングラデシュ)
ダッカ発
2023年08月07日
米国の格付け会社S&Pは7月24日、バングラデシュの長期信用格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に引き下げた。長期ソブリン格付けは「BB-(マイナス)」、短期ソブリン格付けを「B」と据え置くことを発表した。同レポートの主要なポイントは次のとおり。
- バングラデシュの経常収支の赤字は縮小しているものの、外貨準備高などの外部脆弱(ぜいじゃく)性は増大している。
- 今後1年間で外部流動性を強化するため、貿易や財政収入を改善する必要がある。経済バランスの改善を模索中のため、実質GDP成長率はバングラデシュの高い長期予想よりも若干低くなることを予想。
- バングラデシュの長期格付けを「安定的」から「ネガティブ」に格下げした背景には、外部流動性の状況が反映されている。
同レポートでは、バングラデシュの今後3年の経済成長率を6~6.4%と予想する。国内消費や投資の冷え込みにより、前年度の7.1%成長と比べて、2022/2023年度(2022年7月~2023年6月)の経済成長率を5.5%に引き下げた。また、国内の政治の実権が現政権であるアワミ連盟に集中している状況が、組織運営の効率性を抑制している点も指摘している。
マクロ経済においては、バングラデシュの衣料品産業は、安価で豊富な労働力により競争力が高く、2026年の後発開発途上国(LDC)を卒業する前に対外市場の拡大を目指している。直近1年は、エネルギー価格の上昇による発電インフラが影響を受けており、今後3~4年の経済成長を見据えると、エネルギーインフラの改善が重要と指摘する。
今後の国際収支の見通しについては、IMFからの支援や輸入抑制策を踏まえつつも、厳しい状況を予想している。今後1年間についても、外貨準備高の減少が予想され、バングラデシュの対外債務にかかる利子負担も相当額に及ぶと指摘する。
しかし、経常収支の改善により外貨準備高が向上し、国際収支が健全な伸びを示すことで、見通しを再度「安定的」に変更する可能性があることも言及している。
(安藤裕二)
(バングラデシュ)
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