水素関連のポーランド企業が訪日

(ポーランド、日本)

企画部企画課

2023年09月21日

ポーランド投資・貿易庁(PAIH)は9月14日、「H2&FC EXPO 水素・燃料電池展」(千葉県幕張市)内で「ポーランド水素エネルギーセミナー」を開催した。ポーランドが日本で水素をテーマにしたセミナーを開催したのは初めて。

セミナー冒頭では、PAIHのグジェゴシュ・オシャスト副総裁のあいさつとともに、同庁のグジェゴシュ・ガウチンスキ・キーエキスパートがポーランドの水素戦略や投資環境について説明した。ポーランド政府は、2025年までの水素鉄道の開発や、32以上の水素充填(じゅうてん)施設の設置、2030年までの2ギガワット(GW)の低炭素水素生産設備の導入、ポーランド製を含む800~1,000台の新型燃料電池バスの販売、5つ以上の水素バレーの設置(2021年9月24日記事参照)などの目標を掲げる〔「2030年までのポーランドの水素戦略 2040年に向けて外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」(2021年10月発表)〕。ガウチンスキ氏によると、水素バレーは既に8つ立ち上がっている。また、同戦略では、原子力発電による水素生産にも触れているが、生産開始時期は「2035年頃の想定」(同氏)という。

ポーランドはドイツ、オランダに次ぐ欧州第3位の水素生産国。ガウチンスキ氏は、ポーランドの水素生産の約半分(注1)を占める同国化学大手グルーパ・アゾティ(Grupa Azoty)を取り上げ、同社が現在生産するグレー水素(注2)の低炭素化に取り組んでいる点などを紹介した。

ポーランドは欧州のガスインフラ事業者が参画する水素輸送戦略「欧州水素バックボーン(EHB)」にも参加。ガウチンスキ氏は、その水素インフラを貯蔵面から支える取り組みとして、地下の岩塩洞窟での水素貯蔵の構想(注3)を説明した。ドイツ北部やポーランドを中心に岩塩が分布しており、岩塩採掘跡の洞窟を水素貯蔵向けに利用するというもの。ポーランド国内で24~262の同貯蔵スペースを確保できるとみられており、利用開始は2033年ごろという。

同展示会には水素関連のポーランド企業などが参加。クシシュトフ・ズジアルスキ社長も訪日した鉄道車両メーカーのペサ(PESA)・ビドゴシチは同社の水素鉄道車両を紹介した。ほかにも、エネルギー大手オルレン(Orlen、注4)や電力公社PGE(注5)、メドコム(車両用電機品の設計・生産など)、ヒンフラ(グリーン水素・アンモニアの技術統合・システム設計など)などが各社の事業説明を行った。

ガウチンスキ氏は「ポーランドには約200の水素関連企業が集積している。水素分野での日本企業によるポーランドへの投資を期待する」と来場者に呼びかけた。セミナー後、展示場内のPAIHのブースで、訪日したポーランド企業が日本企業と個別商談を行った。

(注1)グルーパ・アゾティのウェブサイトによる情報。

(注2)グレー水素は、化石燃料を原料とし、生成過程で二酸化炭素(CO2)を放出。ブルー水素も、化石燃料を原料とするが、生産過程で発生するCO2を炭素回収・有効利用・貯留(CCUS)などで有効利用または地中に貯留する。グリーン水素は、再生可能エネルギー由来の電力を利用、水を電気分解して生成され、製造過程でCO2を排出しない。

(注3)同氏によると、大きな水素貯蔵スペース1つで8万メガワット時(MWh)の水素を貯蔵可能。同スペースの高さ(深さ)は231メートルで、首都ワルシャワの象徴的な高層建築物の文化科学宮殿(237メートル)とほぼ同じとのこと。

(注4)2023年7月に社名を「PKNオルレン」から「オルレン」に変更。同社はEUの「欧州共通利益に適合する重要プロジェクト(IPCEI)」に参加している(2023年6月9日付地域・分析レポート参照)。

(注5)正式社名はPGEポルスカ・グルーパ・エネルゲティチュナ。

(古川祐)

(ポーランド、日本)

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