8月の米雇用者数は18万7,000人増、失業率3.8%に上昇、賃金の伸び率は低下

(米国)

ニューヨーク発

2023年09月04日

米国労働省が9月1日に発表した8月の非農業部門雇用者数PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は前月から18万7,000人増となった。また、6月の数値が18万5,000人増から10万5,000人増へ、7月の数値が18万7,000人増から15万7,000人増へ、それぞれ大幅に下方改定された。

就業者数が前月から22万2,000人増加し、失業者数が51万4,000人増加した結果、失業率は前月から0.3ポイント上昇して3.8%となった。市場予想は前月と同様の3.5%で、予想を上回った。失業率の上昇は3カ月ぶりとなる。年代別に見ると、25~54歳の失業率(3.1%)がほとんど変化していない一方で、16-24歳の若年層の失業率(8.6%)が4カ月連続で上昇している(添付資料図1参照)。労働省が8月29日に公表した7月の雇用動態調査(JOLTS)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)によると、非農業部門の求人数は4カ月連続で減少していることから、若年層が雇用の調整弁として影響を受け始めている可能性がある。

失業者のうち、一時解雇の失業者は前月より12万2,000人増の78万9,000人、恒常的失業者は前月より16万6,000人増の153万8,000人だった。

労働参加率(注)は、生産年齢人口が前月から21万1,000人増の2億6,721万人、労働力人口が前月から73万人6,000人増の1億6,784万人となった結果、前月の62.6%から62.8%に上昇した(添付資料表1参照)。

8月の雇用者数の前月差18万7,000人増の内訳をみると、民間部門は17万9,000人増、うち財部門が3万6,000人増で、主な業種としては建設業が2万2,000人増、製造業が1万6,000人増だった。サービス部門は14万3,000人増で、主な業種では、教育・医療サービス業が10万2,000人増、娯楽・接客業が4万人増、対事業所サービスが1万9,000人増で、これらが雇用増を牽引した。一方で、情報通信業が1万5,000人減と4カ月連続の減少、運輸倉庫業が3万4,000人減と3カ月連続の減少で、サービス業の中でも業種によって差異がある。政府部門は8,000人増だった(添付資料表2、図2参照)。

平均時給は33.82ドル(前月:33.74ドル)で、前月比0.2%増(前月:0.4%増)、前年同月比4.3%増(前月:4.4%増)と、賃金の伸びは低下した。市場予想は前月比0.3%増、前年同月比4.4%増で、いずれも予想を下回った。前年同月比でみて伸びが高かった業種は、金融業(5.6%)のほか、持ち直し傾向にある新規住宅着工(2023年8月24日記事参照)を背景とした建設業(5.2%)や、夏のレジャー需要を背景とした娯楽・接客業(5.0%)、製造業(5.0%)などだった。

6月と7月の非農業部門雇用者数が大幅に下方改定され、3カ月連続で20万人を下回ったほか、一部業種では明らかな減速傾向が見え始めた。夏のレジャーシーズンが終了し、今後は娯楽・接客業などの業種で伸びが減少していく可能性もありそうだ。加えて、連邦準備制度理事会(FRB)による金融引き締め環境下でも低下傾向にあった失業率が上昇に転じ、賃金の伸びも低下傾向にある。ジャクソンホール会議でFRBのジェローム・パウエル議長が言及した求人者数に関しても(2023年8月28日記事参照)、求職者(失業者)1人当あたりの求人数は明らかな低下傾向にある(添付資料図3参照)。今回の結果は、雇用情勢の「夏の終わり」を感じさせる内容だった。

(注)労働参加率は、生産年齢人口(16歳以上の人口)に占める労働力人口(就業者+失業者)の割合。

(加藤翔一)

(米国)

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