米中古住宅販売戸数は2カ月連続で減少、高金利と在庫不足が重し

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月24日

住宅市場の動向は、住宅投資や住み替えに伴って生じる消費などを通じて米国経済に影響を与える要因となっている。中でも、中古住宅販売は米国の住宅市場の約9割を占める。全米不動産協会(NAR)は8月22日、7月の中古住宅販売戸数を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。7月の中古住宅販売戸数は407万戸で、市場予想の415万戸を下回った。前月比で2.2%減と2カ月連続の減少、前年同月比で16.6%減と2021年9月以来23カ月連続の減少になった。戸建て(前月比1.9%減、前年同月比16.3%減)、集合住宅(4.5%減、19.2%減)ともに減少した。また、中古住宅価格の中央値は、前年同月比1.9%上昇の40万6,700ドルとなった。NARによると、40万ドルを超えるのは今回で4回目になる。

NARのチーフエコノミストのローレンス・ユン氏は、今回の結果について、高い住宅ローン金利と中古住宅の在庫不足の2つが買い手に不利に働いていると分析している。

住宅ローン金利については、連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック)が公表している住宅ローン金利(30年固定物)が8月17日に7.09%となり、2002年4月5日の7.13%に次ぐ高水準になった。2022年3月の米国連邦準備制度理事会(FRB)による政策金利の引き上げ開始以降、住宅ローン金利も顕著に上昇し、これと反比例するかたちで住宅販売戸数が減少している(添付資料図1参照)。

中古住宅の在庫不足については、新型コロナ禍における低金利環境下で住宅を購入した住宅所有者にとって、現在の高金利下で新たにローンを組んで住み替えするインセンティブに乏しいことから住宅在庫が低く抑えられ、その結果、住宅価格が押し上がり、住宅を保有していない層の住宅購入をさらに困難にしている構図だ。他方、中古住宅市場の逼迫に反し、新築住宅市場については、住宅着工件数および住宅着工許可件数が戸建てを中心に緩やかに持ち直しの傾向にある(添付資料図2参照)。この動きが堅調に推移すれば、住宅市場全体では在庫不足の緩和につながっていく可能性がある。

ユン氏は「住宅ローン金利が引き下がれば、より多くの買い手と売り手が市場に集まり、再び動き出すだろう」と期待感を示している。

このように、住宅在庫が増加し、供給が回復することで住宅購入者が増加すれば、賃貸住宅市場の需要の緩和も期待され、物価高止まりの重しとなっていた住居費(2023年8月14日記事参照)の抑制にもつながり得る。こうした観点からも今後の住宅市場の動向が注目されている。

(加藤翔一)

(米国)

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