李強首相がASEAN+3首脳会議に参加、ALPS処理水放出に関する立場を主張

(中国、ASEAN、日本、韓国)

北京発

2023年09月11日

中国の李強首相は9月6日午後(現地時間)、インドネシアのジャカルタで開催された第26回ASEAN+3(日中韓)首脳会議に出席した。

李首相は、ASEAN+3はこれまで幾多の危機による試練を経験しながらも、地域の発展と繁栄のために重要な役割を発揮してきたと評価した。その上で、今後の協力の重点として(1)地域の経済統合の持続的推進、(2)地域における産業の分業協力の持続的深化、(3)科学技術イノベーションによる牽引の持続的強化を提案した。

(1)では香港の地域的な包括的経済連携(RCEP)協定への参加、(2)ではサプライチェーン・産業チェーンのレベルアップの推進、(3)ではデジタルエコノミー、クリーンエネルギー、新エネルギー自動車などの分野での協力を呼びかけた。

また、李首相は、東京電力福島第1原子力発電所のALPS処理水(注1)の海洋放出について、世界の海の生態環境と人々の健康に関わるとし、日本は自らの国際的義務を忠実に履行し、隣国などの利害関係者と十分な協議を行い、責任ある方法で「核汚染水」を処理すべきだとした(注2)。

中国の外交部は7日の定例記者会見で、李首相は首脳会議期間中に日本の岸田文雄首相と簡単に言葉を交わし、ALPS処理水放出について中国の立場を表明したとしている。

李首相は6日午前(現地時間)には、中国・ASEAN首脳会議に出席にした。2013年の同会議で習近平国家主席が「さらに緊密な中国・ASEAN運命共同体」の構築を提起したことを取り上げ、この10年間の協力を評価した。

その上で、運命共同体の構築に向けて(1)経済成長センターの構築、(2)新興産業での協力の推進、(3)地域の平和と安定の維持、(4)人的・文化的交流の拡大の4点を「手を携えて」行うことを提案した。

(1)では産業チェーン・サプライチェーンでの協力深化、(2)では新エネルギー自動車、太陽光発電、人工知能(AI)などの分野での協力強化、(3)では「南シナ海に関する行動規範」(COC)に関する協議や、ネット詐欺対策などでの協力推進、(4)では文化、観光、研修、青少年などに関する協力強化といった内容が挙げられている。

(注1)中国はALPS処理水について「核汚染水」と表現している。

(注2)中国はALPS処理水放出に反対しており(2023年8月24日記事参照)、8月には日本産水産物の輸入を全面停止(2023年8月25日記事参照)するとともに、その買い付け、または使用して食品を加工、調理、販売することを禁止している(2023年8月29日記事参照)。

(河野円洋)

(中国、ASEAN、日本、韓国)

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