欧州委、米国IT大手などをデジタル市場法のゲートキーパーに指定

(EU、米国)

ブリュッセル発

2023年09月08日

欧州委員会は9月6日、デジタル市場法(DMA)(2022年7月19日記事参照、注)に基づき、米国IT大手など6社(添付資料表1参照)を「ゲートキーパー」に指定したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。また、ゲートキーパーが提供するサービスのうち、DMAの対象となる22の「主要プラットフォームサービス」も合わせて指定した。ゲートキーパーに指定された6社は、今後6カ月以内にDMAを順守することが求められる。

DMAは、EU域内市場でIT大手による支配的な地位の乱用防止を目的に制定された新規則で、2022年11月1日に施行された。ゲートキーパーと呼ばれる主要プラットフォームサービスの提供事業者には、多岐にわたる実施事項と禁止事項への順守が義務付けられる。違反した場合、前会計年度の全世界年間売上高の最大10%(8年以内に類似の違反をした場合は最大20%)という巨額の制裁金が科されることになる。

ゲートキーパーの指定に当たって、(a)域内市場への重大な影響、(b)重要なゲートウエーの主要プラットフォームサービスの提供、(c)その事業の地位の強固な持続性という3つの基準と、各基準を判断するためのしきい値が設定されている。このしきい値を満たすプラットフォーム提供事業者は、欧州委により原則としてゲートキーパーに指定される。今回の指定はDMA施行後初となる。

今回の指定と並行して、欧州委は、しきい値を満たすものの、重要なゲートウエーではないとして、主要なプラットフォームサービスには当たらないとの反論が提出されている4サービス(添付資料表2参照)について市場調査を開始している。これらのサービスを主要プラットフォームサービスに指定するか、5カ月以内に結論を出す予定だ。また、欧州委は米国アップルの「iPadOS」について、しきい値を満たさないものの、主要プラットフォームサービスに指定するか評価する必要があるとして市場調査を開始している。こちらは12カ月以内に結論を出す見込み。

なお、欧州委は今回の発表に当たり、一部のサービスに関して、しきい値を満たすものの、主要プラットフォームサービスには当たらないと判断したことも明らかにしている(添付資料表3参照)。これには、韓国サムスンの「サムスンインターネットブラウザ」も含まれる。これによりサムスンのサービスはいずれも、主要プラットフォームサービスの指定を受けなかったことから、ゲートキーパーには指定されなかった。

(注)DMAに関する詳細は、ジェトロの調査レポート「EUのオンラインプラットフォーム政策の概要 EUデジタル政策の最新動向(第3回)」(2023年2月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU、米国)

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