EU理事会、米国大手ITなど規制のデジタル市場法案を採択、6カ月後には適用開始へ

(EU)

ブリュッセル発

2022年07月19日

EU理事会(閣僚理事会)は718日、EUのオンライン・プラットフォーム規制の根幹となるデジタル市場法案(DMAPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を正式に採択した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。欧州議会は既にDMAを正式に可決していることから(2022年7月11日記事参照)、今回のEU理事会の採択により、立法手続きは形式的な署名を待つのみで、ほぼ完了した。202012月の欧州委員会による提案(2020年12月22日記事参照)から、約1年半での成立となった。DMAは、EU官報への掲載を経て、6カ月後に適用を開始する。

DMAは、アマゾン、グーグル、メタ(旧フェイスブック)といった米国IT大手を念頭に、欧州委が指定する「ゲートキーパー」と呼ばれる大規模なプラットフォーム・サービスの提供事業者に対する義務と禁止事項を明確にすることで、EU域内市場でのIT大手による支配的な地位の乱用を防止し、EUの中小企業がこうしたIT大手と公平に競争できる環境を確保することを目的としている。

欧州委がゲートキーパーに指定する基準は、過去3年間の域内の年間売上高が75億ユーロ以上あるいは前年度の株式時価総額の平均が750億ユーロ以上であることに加え、プラットフォーム・サービスの域内の月間利用者数が4,500万人以上かつ年間のビジネスユーザーが1万社以上であることなどとなっている。

ゲートキーパーに指定された事業者は、主に以下を含む所定の措置の実施が義務付けられる。

  • プラットフォーム・サービスの定額サービスなどの解約を、登録と同程度に容易にすること
  • インスタントメッセージサービスの基本的な互換性を確保することで、異なるアプリ間のメッセージのやりとりや通話を可能にすること
  • ビジネスユーザーに対して、同ユーザーのプラットフォームの利用により生み出されるマーケティングおよび広告データへのアクセスを認めること
  • 他のデジタル企業を買収する場合は、既存の競争法の規定上、通知の対象であるかを問わず、欧州委に事前に通知すること

また、禁止される措置として主に以下が含まれる。

  • ランキングサービスにおいて自社が提供する商品やサービスを優遇すること
  • 出荷時にインストール済みのアプリやソフトウエアを簡単にアンインストールできないようにすることや、第三者企業(サードパーティー)製のアプリやソフトウエアをデフォルト仕様に設定できないようすること
  • アプリの開発者に対して、ゲートキーパーが提供する決済システム以外の決済システムの利用を認めないこと
  • ゲートキーパーが提供するサービスによって得られた個人情報を、同ゲートキーパーが提供する別のサービスに活用すること

ゲートキーパーがこれらの義務や禁止事項に違反した場合、欧州委は前年度の全世界総売上高の10%を上限に制裁金を科すことができる。また、違反・不履行が繰り返されていると認められる場合には、制裁金の上限は最大20%に引き上げられる。さらに、過去8年に3回以上の義務の不履行が認められる場合、特定の問題解消措置だけでなく、事業や資産の売却を含む措置を課すことができる。

(吉沼啓介)

(EU)

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