対外投資を規制する米大統領令発出、ジェトロの米中月例レポート(2023年8月)

(米国、中国)

調査部米州課

2023年09月28日

ジェトロは9月27日、米国の対中国関連政策についてまとめた2023年8月分の月例レポートを公表した。このレポートは、日本企業が米中関係に関する米国の動向を把握できるよう、2021年7月から毎月分を作成して特集ページに連載している。

米中関係に関する8月の動きの中でまず注目されるのは、ジョー・バイデン米大統領が8月9日に署名した米国から懸念国への対外投資に関する大統領令だ(2023年8月14日記事参照)。懸念国には、中国のみが指定された(注1)。今後パブリックコメントを経て、半導体・マイクロエレクトロニクス、量子情報技術、人工知能(AI)の3分野で、国家安全保障にとって重要な機微技術・製品に関わる対外投資を制限するプログラムが新設される(注2)。中国はこの大統領令に対して、国家安全保障を名目に米国企業の対中投資を制限し、安全保障や政治の概念の拡大解釈を行うことは中国の発展の権利を奪うものと反発している(2023年8月21日記事参照)。

ジーナ・レモンド商務長官の訪中も、注目すべき点として挙げられる。商務省の発表によると、8月28日のレモンド長官と王文濤・商務部長との会談により、貿易・投資に関する問題解決策を協議する商業問題ワーキンググループの設置や、米国の国家安全保障政策に対する誤解を減らすため、輸出管理の執行に関する情報交換の実施などが合意された。レモンド商務長官はその後、李強首相らとも会談している(2023年8月30日記事参照)。今回のレモンド長官の訪中に対して、米国の産業界は、中国とのビジネス環境改善につながり得るため、歓迎している。一方、共和党を中心に対中強硬派の議員は、輸出管理に関する情報交換について、安全保障に関わるため「交渉対象にすべきではない」と反対している。

なお、米国の閣僚の訪中は、2月の中国による偵察用と思われる気球の米国上空侵入により一時停滞していたものの(2023年2月6日記事参照)、最近では、6月のアントニー・ブリンケン国務長官、7月のジャネット・イエレン財務長官、今回のレモンド長官と、定期的にみられるようになっている。

米国の対中政策・措置や米国側から見た米中関係の動向について、行政府、連邦議会、産業界、学会に分けて解説する月例レポートは、こちらの特集ページからさかのぼって閲覧が可能。米中関係に関する中国の動向も確認できる。

(注1)香港、マカオを含む。なお、懸念国は大統領令の付属書の改定により、今後追加される可能性がある。

(注2)対外投資に関する大統領令に対して、連邦議会からは規制の拡充を求める声が出ている(2023年8月16日記事参照)一方、産業界は過度な規制になることを警戒している(2023年8月16日記事参照)。

(赤平大寿)

(米国、中国)

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