2023年の経済成長率予測と貿易見通しを引き下げ

(シンガポール)

シンガポール発

2023年08月15日

シンガポール貿易産業省(MTI)は8月11日、2023年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(経済成長率)が前年同期比0.5%だったと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。7月に発表した速報値(0.7%)から下方修正し(2023年7月18日記事参照)、前期の0.4%からほぼ横ばいの成長だった。季節調整済み前期比は0.1%で、速報値の0.3%から下方修正した。

2023年通年のGDP成長率見通しについては従来「0.5~2.5%」と予測していた(2023年5月31日記事参照)が、今回「0.5~1.5%」へと引き下げた。MTIはこの理由として、「政策金利の上昇と労働市場の冷え込みにより、今年残りの2四半期で米国の経済成長がさらに減速する」「ユーロ圏のGDP成長率は、外需の低迷と金融引き締めの内需への影響により、今年中は低迷が予測されている」「消費者マインドの低下に伴い、パンデミック後のサービス業の回復が鈍化することから、中国のGDP成長率は今年下半期に減速が予測されている」などとし、シンガポールの外需見通しが依然として弱いと述べている。また、MTIは、世界的なエレクトロニクス部門の低迷が長期化すると予測しており、同部門の回復は早くても2023年末になる見込みとしている。経済の減速リスクについて同省は、(1)先進国で予想以上に続くインフレが世界的な金融引き締めにつながり、消費がさらに低迷して、製造業の不振を悪化させる可能性、(2)ウクライナ紛争の悪化と主要国間の地政学的な緊張の高まりが供給の混乱を引き起こし、消費者と企業の景況感を低下させ、世界貿易を低迷させる可能性があると述べている。このような背景から、シンガポールにおける製造業の成長見通しは弱く、金融・保険部門でも成長が伸び悩むとした。

2023年通年の貿易見通しを再度下方修正

MTI管轄下のシンガポール企業庁(Enterprise SG)が同日発表した2023年第2四半期の貿易統計外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、財貿易総額は前年同期比で18.7%減少し、前期(7.8%減)から減少幅が拡大した。季節調整済み前期比では3.6%減少した。非石油部門の地場輸出額(NODX、注)は前年同期比で13.4%減少したが、前期(16.1%減)よりも減少幅は縮小した。エレクトロニクス製品(22.1%減)と非エレクトロニクス製品(10.7%減)の双方で減少した。2023年通年の財貿易総額ならびにNODXの見通しについては、5月時点の予測(それぞれ「8.0~6.0%減少」と「10.0~8.0%減少」)から、ともに「10.0%~9.0%減少」に引き下げた。

(注)自国生産による財輸出で、再輸出を除く。

(糸川更恵)

(シンガポール)

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