軍管轄の統括会社、国営航空会社と空港運営公社3社を吸収合併

(メキシコ)

メキシコ発

2023年08月22日

メキシコ大蔵公債省は8月17日、官報で決議を公示し、経営効率化と支出削減などを目的に、国防省がマジョリティー出資する事業統括会社がメキシコ国営航空と、3空港の運営公社を吸収合併することを承認した。メキシコ国営航空は2014年に倒産した民間航空会社メヒカーナ航空を政府が買い取り、新たな国営企業として運営を開始すべく、2023年5月に設立された(2023年5月26日記事参照)。メキシコ国営航空とともに吸収合併されるのはチアパス州パレンケ、キンタナロー州チェツマル、同州トゥルムの3空港の運営公社。

国防省がマジョリティー出資する事業統括会社は、フェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)やマヤ観光鉄道を傘下に持つオルメカ・マヤ・メヒカ空港・鉄道・付帯関連サービス・グループ(GAFSACOMM)だ。大蔵公債省決議第2条に基づき、8月21日までに吸収合併の手続きを完了させ、空港運営公社3社は9月1日から、メキシコ国営航空は2024年2月1日からGAFSCOMMと同一法人となる。

空港法第29条は、航空会社が空港運営会社の株式5%以上を取得することや、経営権を獲得すること、空港運営会社が航空会社の運営株式5%以上を取得することや、経営権を獲得することを禁じているが、2023年5月3日付官報で公布された法改正に基づき、国営企業の場合は同規制の対象外となった(2023年5月8日記事参照)。2024年2月以降はメキシコ国営航空が3空港の運営公社と同一法人となり、さらに、メキシコ国営航空が本拠地とするAIFAの運営公社を傘下に持つことになる。識者や航空業界関係者の中には、AIFAの発着枠などでメキシコ国営航空に優先的待遇が与えられるなど、民間航空会社の競争条件が悪化することへの懸念が強まっている。

多額の歳出が見込まれ、国営航空の収益性には疑問の声

メキシコ政府は8月9日、2010年に倒産したメヒカーナ航空の商標権とフライトシミュレーターなど一部の資産を持つ航空パイロット組合連合(ASPA)との間で合意に達し、8億1,500万ペソ(約70億円、1ペソ=約8.5円)で商標権と資産を譲り受けた。これにより、「メヒカーナ」の商標を用い、ボーイング737-800型機10機をリースし、AIFAを拠点に20の国内路線で2023年12月に運航を開始するとした(大統領府プレスリリース8月10日付)。ルイス・クレセンシオ・サンドバル国防相は8月10日の記者会見で、他のエアラインよりも18~20%安価な値段で航空サービスを提供することを約束している。

政府がASPAから譲り受けたのは商標権と一部資産のみで、航空機は別途リースする必要がある。10機の航空機の8年間のリース関連費用は5億2,700万ドルに達するとみられており(「レフォルマ」紙8月18日付)、政府にとっては大きな歳出増加となる。これに加え、燃料費や空港使用料、パイロットやキャビンアテンダントの人件費、保険費用などが必要となるが、政府は他のエアラインよりも18~20%安い価格を約束しており、新国営航空会社の採算性には疑問を呈する声が強い。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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