空港法と民間航空法を改正、カボタージュの自由化は含めず

(メキシコ)

メキシコ発

2023年05月08日

メキシコ政府は5月3日、連邦官報で空港法および民間航空法の改正令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、翌日施行した。同改正は、上院が4月28日に強行採決した20法案(2023年5月2日記事参照)の1つだが、下院では委員会審議や本会議における議論を経て4月20日に賛成多数で可決されていた。同改正は、米国連邦航空局(FAA)が2021年5月にメキシコの航空安全性評価をカテゴリー2に格下げし、現時点でもカテゴリー1への復帰が実現していない状況を受け、速やかなカテゴリー1復帰を目的とし、連邦民間航空庁(AFAC)に航空安全についての広範な監督権限を付与する内容。

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領が当初、国会に提出した法案には、外国企業にメキシコ国内の2地点間の旅客・貨物輸送(カボタージュ)を認める内容が含まれており、国内航空業界から強い懸念の声が上がっていたが(2023年1月24日記事参照)、下院審議の過程で同内容は最終的に削除された。これに対し、業界からは歓迎の声が出ており、全国航空輸送会議所(CANAERO)は、下院がカボタージュ容認を排除するかたちで航空安全を強化する法改正を可決したことに感謝する声明を出した(同会議所ツイッター4月20日付)。

国営企業への広範な事業権の付与が民間との競争を阻害するという懸念も

一連の法改正の中には、空港と航空輸送の双方の広範な事業権を国営企業に付与することを可能にする内容が含まれており、これが連邦経済競争委員会(COFECE)や識者の懸念を招いている。COFECEは、下院担当委員会の意見要請に応え、国営企業に対して特別な許認可を与える内容については反対の見解を出し、国会に対して同内容を削除することを求めていた(主要各紙4月19日)。しかし、同見解が最終的に採用されることはなかった。

空港法改正では新たに第14-BIS条が追加され、インフラ通信運輸相が連邦政府機関に対し、公共入札プロセスを得ることなく、無期限(注1)の空港運営権を付与するこが可能になる。また、航空会社が空港運営会社の株式の5%以上を取得することや経営権を獲得すること(またはその逆)を禁じる第29条が改正され、国営企業の場合はその制限を受けない。さらに、民間航空法にも第10-BIS条が追加され、連邦政府機関に対して公共入札プロセスを得ることなく、無期限(注2)の定期航空輸送事業権の付与が可能になる。これらの改正により、AMLO大統領が以前から主張する国防省傘下の航空会社が設立され、同国営企業が同時に空港の運営権も取得した場合、同空港の発着スロットなどの付与において、国営航空会社と競合する民間事業者に対して不利な扱いをする可能性が生まれるとCOFECEや識者は指摘する。

(注1)民間事業者の場合は最長で50年間。50年を超えない範囲での更新が可能。

(注2)民間事業者の場合は最長で30年間。1度に30年を超えない範囲で更新(一度、あるいは複数回)が可能。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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