国防省傘下に国営航空会社の設立を決議

(メキシコ)

メキシコ発

2023年05月26日

メキシコ大蔵公債省は5月18日、国営航空会社「メキシコ国営航空」の設立を承認する決議を連邦官報に公示した。2014年に倒産した民間航空会社メヒカーナ航空(Mexicana de Aviación)を政府が買い取り、新たな国営企業として運営を開始する。

同決議によると、「メキシコ国営航空」は可変資本株式会社として設立し、国防省が管轄する。登記上の住所はメキシコ州。国が出資する資本金100万メキシコ・ペソ(約780万円、1メキシコ・ペソ=約7.8円)のうち、99万メキシコ・ペソは国防省、1万メキシコ・ペソは国立軍部銀行と空軍が出資する。「メキシコ国営航空」は民間航空会社と同様、国内外向けの旅客、貨物、郵便の輸送を担う。

航空業界の専門家によると、歴史的に国が資本参加する航空会社は採算性に欠ける傾向にあるという。その代表的な理由として、人件費の増大や組織の肥大化、それに伴う官僚主義的な姿勢による業務の非効率化が挙げられている。今回立ち上がる新たな国営会社でも、効率性を重視しない運営が見込まれ、設立当初から助成金交付を視野に入れなければならないのではと懸念する専門家もいる(「レフォルマ」紙5月24日)。

有識者、メキシコシティ空港も軍管轄空港グループ傘下に入る可能性を示唆

アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール現政権下で、軍が建設事業、空港や鉄道の運営など民間部門と同様の事業を幅広く展開するようになっており、市場の競争環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている。

当地の主要メディアによると、近い将来、メキシコシティ空港(AICM)も、「カシオペア」と仮称される海軍省が管轄する空港グループの傘下に入る可能性がささやかれている。現在、海軍省が同グループ設立に向けて取り組んでおり、2023年内に既存の6空港を擁するかたちで設立される予定だ。その後、AICMも同グループの傘下に入るのではないかという(「エル・エコノミスタ」紙4月2日)。

2022年には同じく国防省傘下に、空港・鉄道の運営補助サービスを提供するグループ「オルメカ・マヤ・メヒカ」が設立された。主にフェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA)、トゥルム空港、マヤ鉄道など戦略的インフラ設備の運営を目的としている。

(渡邊千尋)

(メキシコ)

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