米金融規制当局、中堅銀行の長期債務保有に関する規制案発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月31日

米国連邦準備制度理事会(FRB)など米国金融当局は8月29日、資産規模1,000億ドル以上の中堅銀行以上を対象とした、長期債務の保有に関する規制案を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。この規制案についてのパブリックコメントを11月30日まで受け付ける。

新たな規制案は、銀行が破綻した際の銀行システムの混乱リスクと、これにかかる預金保険基金のコストを抑えるべく、損失吸収のための原資として各銀行に一定規模(注1)の長期債務を保有することなどを求めるもの。同様の規制は世界の金融システム上重要な銀行(G-SIB)に指定されている大規模銀行に対しては既に適用されているが、これを資産規模1,000億ドル以上の中堅銀行にも同様に求めることになる。発表によると、対象となる銀行が現在保有している長期債務は、規制案で示した基準の75%程度。規制案が施行された場合、残りの25%は各銀行が新たに調達する必要があるが、長期債務は一般的に短期債務と比較して調達コストが高いことから、長期債務の増加は利ざや(貸出金利と調達金利の金利差による収益)を0.05~0.1%減少させると予想されている。

先に発表した銀行の自己資本規制強化案(2023年8月1日記事参照)に続いて、地方銀行を含む中堅銀行にとっては新たなコスト増となり得ることから、厳格化傾向にある銀行の貸し出し態度(注2)がより一層厳しいものとなる可能性もあり、こうした規制が実体経済に与えるさらなる影響が注目される。

(注1)リスクアセットの6%、総資産平均の3.5%、レバレッジエクスポージャーの2.5%のうち最も高い額が対象。

(注2)FRBが7月31日に公表した銀行貸し出し態度指数(シニア・ローン・オフィサー・サーベイ)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、米国の銀行が過去3カ月間〔2023年第2四半期(4~6月)に相当〕に中堅・大規模企業(年間売上高5,000万ドル以上)向け融資基準を前回調査期間よりも「厳しくした」と回答した企業の割合は50.8%だった。前回調査(2023年5月9日記事参照)から4.8ポイント上昇している。

(加藤翔一)

(米国)

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