米FRBなど金融規制当局、銀行の自己資本要件に関する規制強化案を発表

(米国)

ニューヨーク発

2023年08月01日

米国連邦準備制度理事会(FRB)など金融規制当局は7月27日、銀行に求める自己資本要件を厳格化する規制強化案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。

今回対象となる銀行には、2023年6月に行われたストレステスト(2023年6月29日記事参照)の審査対象ではなかったが、シリコンバレー銀行などの信用不安で問題視されていた資産規模1,000億ドル以上の中堅銀行も含まれている。

本規制強化案は、銀行規制に関する国際統一基準のバーゼルIIIに合わせた自己資本要件の算定方法の導入を求めている。この中には、(1)これまで大規模銀行にのみ課されていた、証券の含み損益の算定を中堅銀行以上にも適用することや、(2)全銀行に対して従来の算定方法では十分に拾い切れていなかったリスクを捕捉すること、(3)大規模銀行の中でも、特に国際取引で重要な役割を果たしている銀行(GSIBs:Global Systemically Important Banks)に対してより厳しい規制をかけること、などが盛り込まれている。FRBはこれらの見直しが実施された場合、対象となる銀行全体で約1,700億ドル(16%増)の自己資本の積み増しが必要になると試算している。

銀行が自己資本の積み増しを行う場合、企業や消費者向けの融資が減少する可能性も考えられるが、FRBのマイケル・バー副議長は、強靭(きょうじん)な金融システムを構築する利益の方が大きいとコメントしている。

金融規制当局は本規制強化案について、2023年11月30日までパブリックコメントを募集し、2025年7月1日から段階的に施行を開始、2028年7月1日に完全施行とする予定だ。

一方、金融サービスフォーラムのケビン・フロマー最高経営責任者(CEO)は今回の規則案について、同社のSNS上で、「消費者や企業への融資のコストを引き上げ、利用可能性を低下させるものだ」と述べるなど、業界の反発は強く、施行までに若干の紆余(うよ)曲折も見込まれる。

(加藤翔一)

(米国)

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