米下院有力議員、中国・清華大と共同研究のカリフォルニア大に調査状を送付

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年07月18日

米国連邦議会下院のマイク・ギャラガー議員(共和党、ウィスコンシン州)とバージニア・フォックス議員(共和党、ノースカロライナ州)は7月17日、カリフォルニア大学(UC)バークレー校が中国の清華大学と広東省深セン市で運営している共同研究所「清華・バークレー深セン研究所(TBSI)」に対して、安全保障上の懸念があるとして、UCの学長およびバークレー校の校長に調査状を送付したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

ギャラガー氏とフォックス氏はそれぞれ、下院の「米国と中国共産党間の戦略的競争に関する特別委員会」と教育・労働力委員会の委員長を務める有力議員だ。調査状PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)は7月13日に送付されており、7月27日までに20以上の調査項目に回答することを求めている。両議員の懸念の根幹は、TBSIの存在により、中国政府の支配下にある清華大学がバークレー校の研究成果や知見に容易にアクセスすることが可能となり、それが中国共産党の経済的、技術的、軍事的優位のために使われ得るという点にある。具体的には、TBSIが軍事転用される可能性が高いデュアルユース技術の研究に関与していること、TBSIが米国商務省の輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL、注1)に掲載されている中国の大学や企業と提携していること、TBSIは学術連携とうたいながら実際は深セン市などからバークレー校への資金供与に利用されていること、などを挙げている。

両議員が挙げた調査項目には、バークレー校とTBSIの間における契約や投資関係、技術提携の範囲、知的財産権のライセンス手続きなどに関する文書の提出や、UCの理事がTBSIについて言及している議事録の提出、TBSIの共同運営委員長を務めるバークレー校校長が米国の輸出管理法令を順守する上で講じた措置の説明、TBSIの諮問委員会にEL掲載企業の幹部が参画していた事実の認識および参画の承認の有無、など詳細な内容が含まれている。回答内容によっては、EAR上のみなし再輸出違反などが発覚するおそれもあるとみられる(注2)。

大学や研究機関を通じた機微技術の国外流出については、米国商務省が2022年6月に「アカデミック・アウトリーチ・イニシアチブ」を立ち上げ、学術機関に対し法令順守の徹底を呼びかけている(2022年6月30日記事参照)。本件の他にも議会主導で調査が拡大していくか、今後の動向に注目だ。

(注1)米国政府が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為に携わっている、またはその恐れがある」と判断した団体や個人を掲載したリストで、それらに米国製品(物品、ソフトウエア、技術)を輸出・再輸出・みなし輸出などを行う場合には、BISの事前許可が必要となる。

(注2)米国外でEARの対象となる米国製の技術やソースコードに関する情報を懸念国の国籍保有者に開示した場合、再輸出を行ったとみなされる。詳しくは、ジェトロ調査レポート「続・厳格化する米国の輸出管理法令」を参照。

(磯部真一)

(米国、中国)

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