米商務省、大学・研究機関向けの輸出管理イニシアチブを立ち上げ

(米国)

ニューヨーク発

2022年06月30日

米国商務省のマシュー・アクセルロッド次官補(輸出管理担当)は6月28日、国内の大学・研究機関からの機微な技術流出を防ぐための「アカデミック・アウトリーチ・イニシアチブ外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(以下、イニシアチブ)」の立ち上げを発表した。

イニシアチブは、全米大学法曹協会(NACUA)年次総会でアクセルロッド次官補が行った講演外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で発表された。同氏は、学術研究機関は米国経済の基盤を形成する科学的・技術的成功ための基本的な要素とした一方、(研究機関の外部に対する)開かれた環境は国家安全保障に重要な脆弱(ぜいじゃく)性を生み出す可能性もある、と指摘した。さらに、技術の進展に伴い、今日では輸出管理上の懸念分野が、従来の大量破壊兵器関連技術のみならず、新興技術にまで広がっているとした。具体例として、人工知能(AI)技術が、中国政府による新疆ウイグル自治区での少数民族の監視に用いられている点などを挙げ、商務省がエンティティー・リスト(EL、注1)に掲載した中国AI大手のセンスタイム(2019年10月9日記事参照)などは、過去に米国の大学と関係があった、と指摘している。

アクセルロッド氏は、特に懸念していることは非公開の研究成果が米国外に輸出、またはみなし輸出(注2)されること、と指摘した上で、大学・研究機関に次の対策を取るよう呼び掛けた。

  • 米国の輸出管理規則(EAR)を理解・実践するための「輸出管理順守プログラム(EMCP)」を策定すること。
  • EMCPには、機微な情報が無許可で流出することを防ぐ「技術管理計画」や、米政府が懸念ある輸出先と指定した対象が掲載された「統合スクリーニングリスト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を用いた提携先の事前調査などを含むこと。
  • さらに、機微な情報のアクセスに対して物理的な障壁や許可手続きを設けること。

また、商務省は、大学・研究機関を支援すべく、次の4点に取り組むとしている。

  1. 関与すべき機関の戦略的な優先付け:国防総省向けの研究開発に従事している機関などに優先的に関与する。
  2. アウトリーチ・エージェントの配置:上記1の機関に、商務省の専門員を派遣し、様々な支援を提供する。
  3. 外国提携先の背景情報の説明:上記1の機関がリスクのある外国機関と提携する場合、専門員を通じて背景事情を説明する。
  4. 研修機会の提供:上記1の機関にEARに関する研修を行うとともに、EMCPの策定・実施に関する援助などを行う。

輸出管理には直結しないものの、2021年12月には中国政府の「千人計画」(注3)に参画した事実を隠して米政府に偽証と脱税を行った疑いで、司法省が訴追していたハーバード大学のチャールズ・リーバー元化学・化学生物学科長が有罪判決を受ける事案が起きている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます。今後、米政府による大学・研究機関への関与が一層強まることが予想される。

(注1)米国の輸出管理規則(EAR)で定められたリストで、省庁横断の委員会が「米国の国家安全保障または外交政策上の利益に反する行為をした」と判断した団体や個人が掲載されている。掲載対象へ米国製品(物品・ソフトウエア・技術)を輸出・再輸出・みなし輸出する場合には事前に許可が必要となる。

(注2)米国内であっても、EARに抵触する技術情報を懸念国の国籍保有者に伝えた場合は、輸出を行ったとみなされる。

(注3)中国の科学的発展、経済的繁栄、国家安全保障を強化すべく、海外から優秀な研究者を集める人材招致プロジェクト。

(磯部真一)

(米国)

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