米商務省、輸出管理の執行強化規則を発表、企業向けガイダンスも更新

(米国)

ニューヨーク発

2022年07月04日

米国商務省産業安全保障局(BIS)は6月30日、輸出管理規則(EAR)の執行を強化するための規則の変更を発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同局は、国家安全保障に深刻なリスクをもたらす違反に対する罰則を強化するとともに、リスクの低い案件は審査を迅速化するなどして、効果的なEARの執行を目指すとしている。

輸出管理担当のマシュー・アクセルロッド次官補は、規則の変更内容をまとめた覚書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますの中で、国家情報長官室(ODNI)は3月に発表した年次報告書外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが国家安全保障に対する脅威の筆頭として中国、ロシア、イラン、北朝鮮を挙げている点に触れ、それら4カ国は米国の機微な技術を取得して自らの軍事能力を向上させようとしていると指摘した。また、同次官補は、このような状況を踏まえ「行政の執行権限を最大限に活用するために、できることは全て行うべき」と述べ、具体的に規則変更は次の4点と説明している。

  1. 重い罰則の適用:深刻度の高い違反には、それに比例して重い罰則を適用する。
  2. 深刻度の低い違反に対する非金銭的和解手段の活用:違反が国家の安全保障に重大な損害をもたらすものではない場合に、非金銭的な和解手段を提示する。例えば、EARに関する研修や順守を約束する代わりに、執行猶予付き輸出特権の停止などの手段を講じる。
  3. 「違反を認めないが否定もしない」和解手段の撤廃:これまでは企業・個人がEAR違反を認めないが否定もしないかたちで和解に応じ、その分、罰則を軽減していたが、これを撤廃する。
  4. 自主開示にデュアルトラックの手続きを用意:企業・個人が自らEAR違反が疑われる情報を開示し違反が軽微な場合は、申請から60日以内に警告状(warning letter)か不問状(no-action letter)を出して事案を解決する。一方、違反が深刻な場合は、専門の調査員と商務省首席法務官室の弁護士を任命する。最も深刻な案件には、司法省も弁護士を任命する。

アクセルロッド氏はこのほか、6月初旬に、EAR違反者に送付する違反認定通知状(charging letter)を発行時点で公開するよう規則を変更外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)した点も合わせて、これらの変更は、利害関係者に対して、効果的に法令を順守しなければ、罰則のリスクを負うという力強いメッセージを送ると述べている。BISは合わせて、更新した輸出者向けのガイダンス外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表し、この中でEARの概要を説明し過去の違反事例を紹介している。BISは最近、国内の大学・研究機関から技術の流出を防ぐためのイニシアチブも立ち上げており(2022年6月30日記事参照)、法令順守の普及啓発と執行強化の両面で積極的な動きを見せている。

(注)違反認定通知状は、EARによる執行手続きの出発点となる。これまでは、違反事例が決着するまで事案は公開されなかった。しかしBISは、これでは違反審査の対象者に対して事案解決に向けたインセンティブが働かない、大衆が法令順守を向上させるための情報にアクセスできない、といった問題があるため、規則を変更したとしている。米国の輸出管理法令の概要・運用などについては、ジェトロ調査レポート「厳格化する米国の輸出管理法令」「続・厳格化する米国の輸出管理法令 留意点と対策」を参照。

(磯部真一)

(米国)

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