投資拡大に向け、戦略的投資家パスを導入

(マレーシア)

クアラルンプール発

2023年07月26日

マレーシアの投資貿易産業省(MITI)は7月24日、直接投資の誘致を促進すべく同日付で戦略的投資家パスを導入すると発表した(MITIプレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。パスの発給は、人的資源省傘下の人材開発公社タレントコープが行う。政府が重視する特定の製造業分野に50億リンギ(約1,550億円、1リンギ=約31円)以上の投資を行う、企業のオーナーや経営幹部などを想定している。

戦略的投資家パスは、国家重要経済分野に貢献する優秀な外国人材を対象としたレジデンス・パス-タレント(RP-T)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(2011年に導入)の一種として扱う。ただし、RP-Tとは異なり、就労ビザの保有状況やマレーシアでの勤務経験などは問わない。戦略的投資家パスによる在留期間は、本人とその配偶者、18歳未満の同伴家族に対して5年間とし、追加で5年間の延長も可能とする。対象となる重要分野は、2022年10月に発表した新投資政策(NIP)(2022年10月18日記事参照)、および今後発表予定の新産業マスタープラン(NIMP)2030で特定する。

デジタルノマド・パスは製造業にも対象を拡大

政府が2022年10月に導入したデジタルノマド・パスについては、従来リモートワーカーを対象に最長1年間の在留、および追加での1年延長を許可していた〔マレーシア・デジタル・エコノミー公社(MDEC)ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます〕。今後は、NIPおよびNIMP2030で特定する製造業分野にも対象を拡大する。具体的には、半導体の設計者など電気電子関連の仕事を受託する技術者などを想定している。在留期間も、最長2年に延長する。

戦略投資家パスの導入とデジタルノマド・パスの対象拡大については、アンワル・イブラヒム首相兼財務相が、2023年7月14日に開催された2024年国家予算案の事前公聴会で表明していた(財務省ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。直接投資拡大の一環として、MITIが主導する投資促進機関の効率化とともに、投資家の入国に関しても省庁横断で円滑化に取り組む考えだ。アンワル首相は公聴会で、金融分野のビザ発給にかかる手続きにつき、従来、内務省も関与していたところ、2カ月前から中央銀行に一本化したとし、投資家の入国が円滑化されつつあることを強調した。また6月半ばからは、雇用パスの申請手続きを新システムの下で一元化しており(2023年6月13日記事参照)、パス発給までにかかる期間は短縮される傾向にある。

テンク・ザフルル・アジズ投資貿易産業相は、今回発表した措置が、「世界的なリスク分散戦略の軸足が、コスト重視からサプライチェーン安定性重視へと移行する中、多国籍企業によるグローバルサプライチェーン再設計の観点から極めて重要な措置だ」と強調した。制度導入でもたらされる恩恵については、「製造業分野の投資家の入国を円滑化することは、高付加価値投資や高度なスキルを持つ専門家の誘致のみならず、国内の労働競争力の向上や、デジタル分野の起業への刺激にもつながる」と説明した。

(吾郷伊都子)

(マレーシア)

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