米GDP成長率、第2四半期は前期比年率2.4%、個人消費と設備投資が牽引

(米国)

ニューヨーク発

2023年07月28日

米国商務省が7月27日に発表した2023年第2四半期(4~6月)の実質GDP成長率(速報値)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは前期比年率2.4%増となり、市場予想(1.8%増)を上回った(添付資料図参照)。

需要項目別にみると、内需では消費が1.6%増(寄与度1.1ポイント)、設備投資が7.7%増(1.0ポイント)と、これら2項目が伸びを牽引した(添付資料表参照)。

消費は、第1四半期(1~3月)の4.2%増に比べて伸び率が低下したが、全体として底堅い動きとなっている。内訳をみると、財消費の伸び率の低下(0.7%増、前期は6.0%増)が消費全体を押し下げる主因となっている。これは、前期での自動車販売の一時的な増加の影響が剥落したことによるものだ。他方、サービス消費は2.1%増と堅調さを保った。

設備投資は7.7%増と前期(0.6%増)から大きく伸びた。構造物、機器、知的財産の全ての分野で伸び率がプラスとなっている。CHIPSおよび科学法(CHIPSプラス法)やインフレ削減法(IRA)などに基づく投資への資金援助策を受け、半導体や電気自動車(EV)などの関連企業が大型の設備計画を発表しているため、それらが影響している可能性がある。他方、住宅投資は4.2%減と9期連続のマイナスとなった。落ち込み幅は2022年後半と比べ小さくなってきているが、高金利の影響もあり弱い動きが続いている。

外需では、輸出が10.8%減、輸入が7.8%減と、いずれもマイナスとなった。純輸出の寄与度はマイナス0.1ポイントだった。

また、食品・エネルギーを除く個人消費支出(PCE)デフレーターは前期比3.8%上昇と、前期(4.9%上昇)から大きく低下した。同デフレーターが3%台になったのは、2021年第1四半期以来9四半期ぶりで、物価上昇が緩和傾向にあることがあらためて確認された。

第2四半期も堅調さを見せた消費だが、今後は幾つかの点に留意が必要だ。1つ目は、消費者の貯蓄と可処分所得の状況だ。新型コロナウイルス禍で蓄積した家計の余剰貯蓄は2023年内に底をつくと言われている。また、実質可処分所得は2023年1月以降、4万6,000ドル台とほぼ横ばいで推移している。2つ目は、金融セクターの貸し出し態度の厳格化による影響だ。2022年7月~2023年6月の金融機関による自動車ローンの貸し付け却下率は、2013年10月以降で最高水準に達するなど(2023年7月26日記事参照)、金融機関は家計に対する貸し出し態度を厳格化しており、消費者が資金を調達しにくい環境だ。これに伴い、既に影響が顕在化している住宅投資のほか、自動車などの購入に影響が波及しないかどうか留意が必要だ。3つ目は、2023年10月から再開される教育ローンの返済再開の影響だ。バイデン政権はさまざまな対策を行っているが(2023年7月18日記事参照)、可処分所得に対する一定の影響は避けられないとの見方がある。4つ目は、雇用の状況だ。米国民間調査会社コンファレンスボードが7月25日に発表した7月の消費者信頼感指数外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますが2021年7月以来の高い水準を示すなど、経済の現状に対する消費者マインドはポジティブだ。ただし、こうした消費者マインドは強い雇用情勢に支えられている面が大きい。米国金融情報会社のS&Pグローバルが7月24日に発表した7月の米国製造業購買担当者景気指数(PMI)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでは、新規雇用がやや鈍化しつつあることなどが報告されており、今後の動向に注意が必要だ。

ただ、連邦準備制度理事会(FRB)のジェローム・パウエル議長が7月26日の連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で「(FRBの職員は)もはや景気後退を予測していない」と述べたように、経済がソフトランディングするという見方も高まってきているようだ。

(加藤翔一)

(米国)

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