温室効果ガス自主的排出削減取引管理弁法を改正、CCER発行再開の見通し

(中国)

調査部中国北アジア課

2023年07月14日

中国の生態環境部は7月7日、「温室効果ガス自主的排出削減取引管理弁法(試行)(意見募集稿)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」を発表した。同弁法は、2012年6月から施行している「温室効果ガス自主的排出削減取引管理暫定弁法(以下、暫定弁法)」を改定するもので、2023年7月7日から8月6日までパブリックコメントを実施している。

中国の全国炭素排出権取引市場(全国ETS、2021年6月3日記事2021年7月19日記事参照)は、重点排出事業者が政府によって義務的に割当られて炭素排出枠(CEA)を取引するコンプライアンス市場と、多様な参加者が主に排出削減カーボンクレジットである中国認証排出削減量(CCER、注1)を取引する自主的排出削減量取引市場(ボランタリー市場)に分けることができる。今回の改定では、CCER申請・登録可能な自主的排出削減プロジェクト(以下、プロジェクト)は、暫定弁法の施行(2012年6月13日)以降に開始されたものとした(注2)。また、プロジェクトの排出削減量は、カーボンピークアウトとカーボンニュートラルの目標を掲げた日(2020年9月22日)以降、かつプロジェクトの申請日から5年前以内に発生したものとした。CCERの取引は2013年に開始されたが、2017年3月14日から現在に至るまで、新規プロジェクトのCCERの認証・発行が停止していた。

同弁法は、ボランタリー市場の秩序ある運営を確保するための基本的な制度となり、合計8章46条で構成される。同弁法では、プロジェクトの登録、審査・決定やCCERの検証・登録から、CCER取引、検証・登録機関の管理までの基本的な要件を規定するとともに、自主的に排出量を削減しようとする参加者や管理監督者の法的責任を明確にしている。なお、中国国内で登記された法人およびその他組織、個人は、同弁法に基づき、ボランタリー市場に参加できる。

そして、同弁法の施行により、全国統一のボランタリー市場向けの登録機関や取引システムが構築される。同取引の管理部門となる生態環境部の気候変動対応司の責任者は「現在の排出削減メカニズムは多様であるため、全国統一のボランタリー市場の取引を開始することは急務だ」と指摘した。

(注1)CCERは、プロジェクト単位の排出削減によって生じたカーボンオフセットクレジット。プロジェクト単位で発行される。プロジェクトには、再生可能エネルギー、炭素隔離、メタン排出削減、省エネルギー効率の向上などがある。なお、ジェトロ作成の「中国における脱炭素に向けた取組・方法に関する調査(2023年3月)」に関連情報の記載がある。

(注2)暫定弁法では、CCERプロジェクトの申請・届け出条件として、2005年2月16日以降に開始されたものとしていた。

(富永笑美子)

(中国)

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