欧州委、繊維製品に関する拡大生産者責任を提案、域外事業者も対象

(EU)

ブリュッセル発

2023年07月13日

欧州委員会は7月5日、EUの食料システムと農業経営の強靭(きょうじん)化に向けた政策パッケージ(2023年7月13日記事参照)の一環として、廃棄物枠組み指令の改正案外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを発表した。現行廃棄物枠組み指令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、環境や健康の保護を目的に、廃棄物の削減に向けて廃棄物の発生予防、再使用、リサイクルの順で実施し、廃棄を最終手段と位置付ける廃棄物管理原則を設定している。改正案は、繊維と食品の廃棄物削減に特化したもので、繊維廃棄物(欧州委プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)については製造事業者などに拡大生産者責任を課し、食品廃棄物については加盟国に対して削減目標を設定する(注)。改正案は今後、EU理事会(閣僚理事会)と欧州議会で審議される。改正案が成立した場合、施行から18カ月以内に加盟国ごとに詳細を規定した国内法に置き換えられ、適用される。

繊維廃棄物に関しては、現行指令において、再使用を推進するための制度の設置などを加盟国に求めており、加盟国は2025年1月までに分別回収を開始することが義務付けられている。ただし、現行指令の目標達成に向けた取り組みは全体的に遅れが指摘されており(2023年6月14日記事参照)、繊維廃棄物の分別回収についても、一部の加盟国では2025年1月までの開始が困難な状況となっている。ファストファッションなどの影響で今後も繊維製品の消費は増加が見込まれている中で、再使用やリサイクルは進んでいないのが現状だ。

そこで改正案は、「持続可能な繊維戦略」(2022年4月4日記事参照)に基づき、再使用やリサイクルによる繊維廃棄物の削減や循環型製品の開発を後押しすべく、管理原則に合致した廃棄物管理の費用負担を繊維製品の製造事業者などに求める拡大生産者責任を課す。対象製品は、付属書IVcが規定する一般消費者向けの洋服、ブランケット、ベッドリネン、カーテンなどの繊維製品や靴などだ。対象企業は、一部の小規模事業者を除く、域内の製造事業者、輸入事業者、販売事業者などで、域内の最終消費者に対象製品を直接販売する域外事業者も含む。対象事業者は、対象製品の再使用・リサイクルに向けた回収、分別、再利用に向けた準備、リサイクル、廃棄とその間の輸送の各費用を負担することが義務付けられる。また、加盟国は対象事業者の登録制度を設置する。登録事業者のみが当該加盟国での対象製品の供給を認められる。

食品廃棄物に関しては、現行指令において、加工・製造から消費者までのサプライチェーンにおける廃棄物の削減措置を実施することを加盟国に求めており、加盟国は食品廃棄物削減プログラムを策定することが義務付けられている。しかし、こうした対策にもかかわらず、域内での食品廃棄物は減っていない。そこで改正案は、2030年までに2020年比で、食品の加工・製造段階で出る廃棄物を10%削減、小売り、外食産業、消費者が出す廃棄物を合算で人口1人当たり30%削減という目標を加盟国に課す。また加盟国は、目標達成に向けた食品廃棄物削減計画の見直しも求められる。

(注)食品廃棄物の削減については欧州委のFAQを参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

(吉沼啓介)

(EU)

ビジネス短信 5db3b1c54ede295e