欧州委、多くの加盟国で2025年までの再使用・リサイクル目標の未達成の恐れを指摘

(EU)

ブリュッセル発

2023年06月14日

欧州委員会は68日、廃棄物削減に向けて設定している再使用やリサイクルに関する2025年目標に関して、過半数のEU加盟国がいずれかの目標を達成しない恐れがあるとする報告書を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、添付資料表12参照)。報告書は、大多数の加盟国で2025年目標の達成に向けた廃棄物処理改革が実施されているものの、遅延も散見されると指摘。再使用やリサイクルの実施状況は加盟国間で大きく異なり、一部の加盟国では2025年目標と現状との乖離が非常に大きく、達成には今後より一層の取り組みが求められるとしている。

報告書が調査したのは、廃棄物枠組み指令と包装・包装廃棄物指令に基づく、2025年までに達成が求められる以下の目標だ。

廃棄物枠組み指令:一般家庭などから出る廃棄物(一般廃棄物)のうち、再使用に向けて処理、あるいはリサイクルされた廃棄物の割合を重量ベースで最低55%に引き上げること。

包装・包装廃棄物指令:包装廃棄物のリサイクル率を重量ベースで最低65%に引き上げること。また、以下のように、原料別リサイクル目標を達成すること〔プラスチック(50%)、木材(25%)、鉄金属(70%)、アルミニウム(50%)、ガラス(70%)、紙・段ボール(75%)〕。

一般廃棄物に関しては、2020年にはEU全体で49%が再使用に向けて処理、あるいはリサイクルされているものの、18加盟国が2025年目標を達成できない恐れがある。また、廃棄物枠組み指令の最終的な目的は廃棄物発生量の削減であるにもかかわらず、廃棄物発生量はむしろ近年増加傾向にある。

包装廃棄物については、EU全体のリサイクル率は2020年時点で64%に達しているが、2016年以降リサイクル率は停滞している。2025年目標未達成の恐れがある加盟国は10カ国ある。なお、包装廃棄物の総量は、2013年から2020年にかけてEU全体で15%も増加している。原料別リサイクル目標では、19加盟国がプラスチックのリサイクル目標の達成がこのままでは困難な状況にある。

EUでは包装廃棄物のさらなる削減に向け、包装・包装廃棄物規則案(2022年12月2日記事参照、注)が現在審議されている。ただし、規則案では、多くの加盟国で包装廃棄物削減に向けた取り組みの成果が十分に上がっていない現状を踏まえ、包装廃棄物のリサイクル率に関する現行指令の2030年目標(70%)の引き上げを断念している。2023年中には廃棄物枠組み指令の発表が見込まれており、その内容が注目される。

(注)詳細は、ジェトロの調査レポート「EUの循環型経済政策(第2回)包装・包装廃棄物規則案を中心とする2022年政策パッケージ第2」(20233月)を参照。

(吉沼啓介)

(EU)

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